「Z星研究調査隊~サイエンスメイト~」報告

去る7月第1週・第2週の週末(7~8日・14~15日)(7~8日・14~15日)の2回にわたり、国立天文台水沢VERA観測所において「Z星研究調査隊」が行われました。水沢VERA観測所では、これまで地元のNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター主催の中学生を対象にしたサイエンスメイトに共催するという形で電波観測や理科実験などを体験してもらってきましたが、今年度は岩手県高等学校文化連盟自然科学専門部を加えた三者共同で、高校生を対象に電波望遠鏡での観測研究体験を行う事になりました。この「Z星研究調査隊」では、岩手県内の高校生に最先端のVERA水沢20m電波望遠鏡を用いて、より本格的な観測研究を体験してもらおうというものです。当初10名程度と考えていた募集に、21名もの応募がありました。希望者には作文を書いてもらったのですが、どれも良く書かれていて強い意気込みを感じました。残念ながら応募者全てを受け入れる事は出来なかったのですが、水沢・盛岡や、遠くは釜石の高校から、最終的に13名の高校生に参加してもらう事になりました。

参加した高校生は天文学の基本的な講義を受けた後、4班に分かれて天文台のチューターの説明・アドバイスを受けながら観測スケジュールを作成し、一昼夜を4交代でVERA水沢局20m鏡を用いて水メーザーの探査を行いました。探査の対象・方法は各班担当のチューターがアイデアを用意しましたが、実際の観測は高校生自身にも考えてもらいながら進めました。第1回目の七夕の夜は快晴に恵まれ、電波観測の他にもイーハトーブ宇宙実践センターにより行われた観望会も大変好評でした。1回目の観測でメーザーを検出出来た班もありましたが、残念ながら2回目に行った確認観測で偶然近くにあった既知のメーザーが漏れ込んでいた事が分かりました。一方、他の班では2回の観測から幾つかメーザーらしいスペクトルを検出していて、もしそうなら新発見の水メーザーである可能性があります。観測は終わってしまいましたが、これらのメーザー候補に関しては追観測を行えないかと相談しているところです。

最終日には班ごとに発表会を行いましたが、予想以上に良く理解してしっかりと発表をまとめてくれたのはうれしい驚きでした。VERA初期成果の記者発表と前後していた事もあり、地元新聞社・テレビ局の取材があり、高校生もインタビューを受けていました。観測はひとまず一区切りつきましたが、来年1月に花巻で行われる岩手県高等学校総合文化祭自然科学専門部発表会で、結果をまとめて発表してもらう事になっています。参加した高校生達がこの体験を通して天文学、さらには科学全般に興味を持ってもらい、一部でも科学の道へ進んでくれる、またそうでなくても周囲にその面白さを伝えてくれる様になる事を期待しています。

「国立天文台ニュ-ス No.170より転載」<水沢VERA観測所 宮崎 敦史>

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