2009年の石垣島「美ら星研究体験隊」報告

毎年恒例となっている「美ら星研究体験隊(以下"美ら研")」が国立天文台水沢VLBI観測所と沖縄県立石垣少年自然の家・八重山地区県立高等学校長連絡協議会・NPO八重山星の会との共催により、8月19日から21日に石垣島で実施されました。今年は、石垣島から八重山高校生10名と沖縄本島の開邦高校生6名の計16名が3日間の研究体験をしました。

美ら研は、地元の高校生に国立天文台で行われている研究を知ってもらい、天文や科学への興味を持ってもらうことを目的に行われています。VERAを用いた電波観測の3班と、石垣島天文台の1m望遠鏡「むりかぶし」を用いた可視光観測の1班に分かれて、国立天文台のスタッフとともに本格的な観測的研究を行いました。

美ら研は今年で4回目となり、プログラムもほぼ確立してきました。少年自然の家での開校式とVERAに関する講義、VERA石垣局の見学から始まり、初日の夜から3日目の昼までは各班に分かれて、昼夜を問わず観測や解析を行いました。その間に、石垣島天文台での観望会などもあり、若い高校生たちにとってもハードなスケジュールとなっています。

電波観測の3班は、例年通りVERAの観測対象となるメーザー天体の探査を行いました。今年は、水メーザー(波長1.3cm)に加えて、新たにVERAで観測が可能になったメタノールメーザー(波長4.5cm)の観測を行う班もありました。美ら研は「結果が予想できる実習とは異なり、失敗の可能性はあるが成功すれば学術的に意義のある研究」を目的としています。残念ながら、今年は新メーザー天体の発見はできず、研究の難しさの方を経験する結果となってしまいました。

一方で、むりかぶし望遠鏡による可視光観測の班では、7月に現れた木星の衝突痕のモニター観測を行うというテーマでした。こちらは、予想に反して?衝突痕が消えていた、という結果でした。観測結果としては「何も見えなかった」ということになりますが、衝突痕の寿命やその性質などを議論できる貴重なデータを取得することができた、という点では意義のある研究になったはずです。

今年の美ら研では、4回目にして初めて、参加者へのアンケートをとってみました。その中で、全ての参加者が「美ら研に満足」と回答してくれました。お世辞もあるかも知れませんが、観測結果がネガティブであっても、研究体験自体を貴重な経験として楽しんでもらえたならば、企画者としてはうれしい限りです。「3日間では短い」という意見などもあり、今後の美ら研がさらに充実したものとなるよう、参加者の意見をフィードバックさせていきたいと考えています。

また、今年は電波観測の班で、VERA水沢局で行われた同様の研究体験「Z星研究調査隊」で見つかった新メーザー天体候補のフォローアップ観測も試みました。今後は、VERA各局で行われている研究体験を通して、高校生たちの交流が進むことも期待したいと思います。

より美ら研を楽しめるものにするには、やはり研究者としては成果=新発見が求められます。私たちも、メーザー天体探査については未検出の原因をより詳しく検討し、来年の成果につながるようにしなければなりません。ちなみに、美ら研によるメーザー探査では、第1回と第3回で新天体の検出に成功し、第2回と第4回(今年)は未検出でした。来年の第5回はぜひ期待下さい!

「国立天文台ニュ-ス No.196より転載」<水沢VLBI観測所 廣田 朋也>

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