2004年度国立天文台VLBIワークショップ「mm, μarcsec, nGalで拓く測地・地球物理」報告

2005年1月19日と20日の2日間、国立天文台水沢観測所と同VERA観測所の共催で、「mm、μarcsec、nGalで拓く測地・地球物理」と題するワークショップが国立天文台三鷹キャンパスで開かれました。計23件の講演と、多数の参加者による討論を行いました。

国立天文台では、電波源の精密位置計測による銀河系の地図作りを目指すVERA観測が始まっています。また、VERAアンテナの位置を決めるための測地観測も、2004年末から定期的に行われるようになりました。VERAでは、座標の精度として1mm~2mmの精度を維持することが要求されていますが、実際の観測でもこれに見合う精度のデータが出始めています。この精度を維持し、得られるデータを解釈していくには、観測局に変位を与える種々の要因に対して、これまで以上の精度でのモデリングが必要になります。また、測位観測(変位の観測)のみでは、地球物理学的な現象の一部のみを捉えることになり、重力観測などの他の観測手段とのコロケーションが必須になると考えています。

重力観測については、例えば超伝導重力計の国際観測網(GGP:Global Geo- dynamics Project)による微細な重力変化の観測や、CHAMP、GRACEといった衛星重力ミッションによるグローバルスケールの重力変動が捉えられるようになっています。測位と重力の観測精度の向上は、地球のダイナミックスの理解を深める上で、その重要度性は増しています。

今回のワークショップは、天文、測地、地球物理、そして装置開発のそれぞれの分野の研究者が会して、高精度観測を利用した今後の測地・地球物理研究について、そのサイエンス、観測と技術上の課題、今後の展望について議論することを目的開かれました。今後、観測データの蓄積とともに、この種の研究会を継続していくことにより、新しい学問を拓くであろうことを確信しています。

「国立天文台ニュ-ス No.141より転載」<VERA観測所 田村 良明>

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