日韓合同電波望遠鏡群で探る巨大ブラックホールジェット 〜見えてきた「超光速噴出流」の現場〜

用語説明

活動銀河: 銀河の中心に超巨大ブラックホールを有し、その周辺から太陽の1兆倍を超えるようなエネルギー放出現象やジェットを噴出している天体です。このジェットなどにより中心領域から放射されるエネルギーが、その銀河全体の放射よりも強い場合も多数見つかっています。中心領域が星のような点源に見えるものがあり、それらは準恒星状電波源(クエーサー)とも呼ばれます。

シュバルツシルト半径: ブラックホールの強い重力場によって、光さえも脱出できなくなる領域の半径のことです。自転していないブラックホールの場合、シュバルツシルト半径が、そのブラックホールの半径ということができます。

VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry): 国立天文台が有する日本のVLBI観測網の1つです。日本国内4カ所(岩手県奥州市・東京都小笠原村・鹿児島県薩摩川内市・沖縄県石垣市)に直径20mの電波望遠鏡が配置されています。これら4台の電波望遠鏡を同時に使うことで、電波望遠鏡の最大の間隔(基線長)に相当する直径2,270km(日本列島相当)の望遠鏡と同じ解像度を得ることができます。

韓国VLBI観測網 (KVN:Korean VLBI Network): 韓国天文宇宙科学研究院(KASI)が有する韓国のVLBI観測装置で、韓国国内3カ所(ソウル市・蔚山市・済州島)に直径21mの電波望遠鏡が配置されています。それぞれの電波望遠鏡の間隔は305km~478kmとVERAに比べて短いですが、ミリ波帯の4つの周波数の電波を完全同時に観測できる世界で唯一のVLBI観測装置です。

日韓合同VLBI観測網 (KaVA:KVN and VERA Array): KVNとVERA、計7台の電波望遠鏡を用いることで短い基線から長い基線までを同時に使って観測を行うことができるようになります。このような観測を行うと、KVNやVERAだけでの観測に比べて数倍も品質の高い電波画像を得ることができるようになります。

超光速運動: 巨大ブラックホール噴出流の実際の速度が光速(c)に非常に近い速度でほとんど観測者の方向に向かって運動する時に観測される「見かけ上」の運動です。実際の速度(v)と見かけの速度(vapp)の間には以下の式の関係があります。

例えばジェットが観測者の視線方向から20度(θ=20deg)傾いて運動しているとすると、以下の図(横軸:実際のジェットの速度、縦軸:観測される見かけのジェットの速度。それぞれ光速に対する割合。)の青線のように、見かけの速度が光速の50%、100%、500%だった場合、実際にジェットは光速の62%(赤線)、78%(緑線)、99%(橙線)という非常に速い速度で運動していることになります。1970年代から多数の活動銀河ジェットで見つかっていますが、このように観測の詳細を考えると、実際のジェットの速さは光速を越えている必要はなく、相対性理論とは矛盾せずに説明ができることがわかっています。超光速運動現象が検出されるかどうかは、いわばジェットが非常に強い加速を受けているかどうかを判断する重要なバロメータと言えます。

アルマ望遠鏡 (ALMA: Atacama Large Millimeter/submillimeter Array): 南米チリの高地にあり、波長1cmより短い電波では世界最高性能を誇る電波望遠鏡といわれています。日本、米国、欧州各国を含む世界の多数の国々が共同で運用しています。

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