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ますます「ふれあい天文学」


 ふれあい天文学は「あなたの教室に天文学者を届けます」という触れ込みで2010年度から始まった、国立天文台の職員が全国各地の小中学校で行う出前授業の取り組みです(http://prc.nao.ac.jp/delivery/)。将来の天文学者を育てることも視野に、子供たちに宇宙の感動や夢を与えようというのがそもそもの動機ですが、逆に派遣された講師が子供たちから元気をもらってくるという思わぬ副産物もあるようです。最近の小中学生の興味、地域による違い等を知る良い機会でもあります。私自身は、2年目から参加し、北は盛岡、南は静岡まで、これまで9校に出前授業に行ってきました。

 

 

さて、今回は、海岸から約5km、福島原子力発電所から約20kmと、東日本大震災でかなり大きく被災した地域にある、福島県南相馬市立石神中学校を訪問しました。地震や津波の被災、その後の避難の影響で、中学校の生徒数は約2割減りましたが、明るく一生懸命生きている姿を目の当たりにしました。ふれあい天文学として、3年生全員約100人に対して、午前と午後に分けて授業を行いました。

 今回中学校から期待されたことは、天文領域の一連の授業の導入として、太陽系の天体の特徴や謎、興味深い現象等を、トピックを交えて紹介し、宇宙の大きさや広がりを感じさせてほしい、ということでした。 具体的には、「宇宙機による探査の成果の紹介」「太陽系天体についてわかってきたこと」「日本の月探査と小惑星探査について」「諸外国やJAXAの他の探査ミッションの成果など」、というお題をいただきました。これは当日配られた実施案に載っていたもので、私がすでにまとめた「地球から宇宙へ」という題名の授業の構成案でも、最近の太陽系の身近な話題を紹介する、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト提供の4次元デジタル宇宙ビューワー "Mitaka"や「月の形成」の動画を用いて、太陽系や宇宙の構造を映像で体験してもらう、「アポロ」や「かぐや」の成果を紹介する、各国の月惑星探査の今後の計画を年表で紹介する等が含まれているので、両者の対応は充分とれていると思い予定通り授業に臨みました。後から送っていただいた生徒たちの感想文の中で、「今まで知らなかったことを知って良かった」、「宇宙にますます興味を持った」、等の言葉を多く目にするにつけ、ふれあい天文学の効果は結構大きい、私もこれに参加して良かった、とあらためて感じます。

 月の起源に関連して巨大衝突説について話した時、今年習ったばかりなのでよく覚えているという反応がありました。理科でここまで教えるのか?とちょっとびっくりしましたが、国語で習ったと聞いてまたびっくり。後で、国語の教科書に載っている、小久保英一郎*著「月の起源を探る」という題の文章を見せられました。「説明の順序や図の使い方に着目して内容を捉える」「筆者の科学的なものの見方や考え方について自分の考えをもつ」という二つの目標が書かれていました。最近の国語では論理的な文章にも力を入れていると、認識を新たにしました。

 今回は午前と午後2回授業を行った関係で、お昼に校長先生と給食をいただく機会に恵まれました。とても美味しい給食でした。その時、この中学校は英国に姉妹校があり、石神の日英交流協会を中心に、生徒の交流を震災後も途絶えること無く約30年間続けていることをお聞きしました。1年おきに約20人の生徒を1週間派遣し、英国からも生徒を受け入れているそうです。市をあげて教育にすごく力を入れていることを感じました。また、南相馬市(旧原町市と近隣の地区が合併した新しい市)には大学が無いので、大学の先生等に話をしてもらうことにとても期待しているともおっしゃいました。ますます「ふれあい天文学」が注目されそうです。

 午後の授業の最後に、一人の女子生徒が代表して、「これでふるさと天文学を終わります」と挨拶し、一同笑いの中、和やかな雰囲気で終わりました。

(文責:花田)

*国立天文台 理論研究部/天文シミュレーションプロジェクト 教授