You are here東アジア 惑星科学・探査 夏の学校 2018@府中 参加報告 -その1-

東アジア 惑星科学・探査 夏の学校 2018@府中 参加報告 -その1-


2018年5月25~27日の3日間、東京都府中市において「東アジア 惑星科学・探査 夏の学校 2018」が開催されました。この企画の目的は、主に日本・中国・韓国で惑星科学を学ぶ大学院生に最新の惑星科学の講義と交流の場を提供することです。

2016年に中国・武漢で始まったこの夏の学校は、昨年第2回目が韓国・忠淸南道禮山郡(チュンチョンナムド イェサングン)で開催され、今回が第3回目でした。参加した学生は21名で、国別の参加者数は日本5、中国5、韓国7、マレーシア1、インドネシア1、アメリカ1、オランダ1でした。東アジア以外の国からも参加者があったのが今年の特徴です。国立天文台RISE月惑星探査検討室から、室長並木が主催者として、また、樋口と松本(本稿の筆者)がオブザーバとして参加しました。

会場となったホテルコンチネンタル府中において、5月24日に前日の夕食会が開かれ、まず講師・参加者がお互いに親睦を深めました。大学院生は期間中2人または3人部屋に宿泊したので、それぞれルームメイトとさらなる交流を持てたのではないかと思います。

今年のテーマは「小惑星の科学」で、最前線で活躍されているDavid Polishook博士(Weizmann Institute of Science)、Michael Zolensky博士(NASA Johnson Space Center)、矢野創博士(JAXA宇宙科学研究所)の3名の講師が、それぞれ自分の専門・経験に基づいて講義をしてくださいました。以下、講義の内容を簡単に説明します。初日はPolishook博士が(1)地上からの観測・宇宙機からの観測、(2)小惑星の分類について、Zolensky博士が(3)隕石・流星、(4)レゴリス * について話されました。2日目はPolishook博士が(5)熱変性プロセスについて、矢野博士が(6)軌道進化、(7)探査機によるリモートセンシング・その場観測・サンプリングについて、Zolensky博士が(8)母天体、(9)リターンサンプルの地上分析について、そして3日目は矢野博士が(10)将来ミッションについて講義をされました。このように、一言で「小惑星の科学」と言っても、そこには地上観測、探査、軌道の理論計算、物質分析など幅広い分野が関わっており、それらについて3日間で集中的に学べる場が提供されたことは意義深かったと思います。私自身、専門外の分野について基礎から学ぶことができ大変有意義でした。講師の方々は、時に大学院生に向けて質問を投げかけ理解を助け、逆に大学院生からの質問に対しては熱く答え(特にご自分が苦労された部分は自然と語り口が熱くなる)、双方向の活発な議論がなされていました。

大学院生には、「どのような小惑星を探査したいか?」というグループ討議のテーマが与えられました。4つのグループに分けられた大学院生は、それぞれのグループにおける議論の後、最終日にその結果を発表することになっています。講義中の質問も、この議論を意識したものとなっていたようです。また、休み時間や食事の時間を用いて積極的に講師に質問する大学院生の姿も見受けられました。グループ討議は夕食後も夜遅くまで続けられていました。議論のスタイルにもそれぞれ特徴があり、全員で議論を深めるグループもあれば、分担を決めて個別に作業し後で結果を持ち寄るグループもありました。実は私が参加できたのは2日目までで、残念ながら学生プレゼンテーションを直接聞くことができなかったのですが、M型小惑星 ** 探査が複数提案され、学生同士の質疑応答も活発だったと聞きました。また、多くの参加者は3日目の午後にJAXA宇宙科学研究所へ移動し、「はやぶさ2」の運用室や今年2月にオープンしたばかりの宇宙科学探査交流棟を見学したとのことです。

私には日本の参加者も他国の参加者に負けず堂々と質問・議論しているように見えました(少なくとも自分が学生だった時と比べると積極的で素晴らしいと思いました)。この夏の学校の参加者から、将来国際的に活躍する研究者が出ることが楽しみです。さて、参加者自身はどのような感想を持ったのでしょうか?今後2回に分けて参加された日本の大学院生へのインタビュー記事を掲載します。これらを通して夏の学校の醍醐味がより詳細に伝われば(そして来年以降日本からの参加者が増えれば)幸いです。

謝辞:夏の学校に係る参加費・渡航費・国内旅費について、自然科学研究機構の戦略的国際研究交流加速事業の支援を受けました。ここに謹んでお礼申し上げます。

(文責:松本)

(*)レゴリス:月や小惑星などの天体表面を覆っている細かい堆積物

(**)M型小惑星:主に鉄やニッケル等の金属でできていると考えられる小惑星