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月の内部構造は今どこまで分かるのか!?


論文名

Error determination of lunar interior structure by lunar geodetic data on seismic restriction

 

著者名

Ryuhei Yamada, Koji Matsumoto, Fuyuhiko Kikuchi, Sho Sasaki

 

掲載雑誌: Physics of the Earth and Planetary Interiors

 

出版社: ELSEVIER 掲載号・頁: vol.231, 2014, pp.56-64

 

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.pepi.2014.02.005  

 

月の内部はこれまで様々な月の探査で得られたデータを使って調べられてきました。NASAのApolloミッションでは、宇宙飛行士が月面に地震計を設置して月の地震波を観測しました(図1)。この地震波が月の内部をどのくらいの速度で伝わるか調べる事で、月内部がどのような物質からできているかを知ることができます。また、月を周る人工衛星の軌道が月の重力によりどのように変化するかを精密に測る事で、月の重力場を調べる事ができます。その重力場の情報から、月内部に重い物質がどのように分布しているか、月の内部がどの程度硬いのかの情報を得ることができます。この論文では、まず、これまでの探査で得られてきた地震や重力のデータから、月の内部構造が現状どの程度まで分かるのかを評価しました。そして、将来得られる月の探査データによって、月の内部構造についての知見がどの程度まで改善できるのかも数値計算により評価しました。

 

 月で得られた地震波のデータはApolloの探査で得られたものしかありません。その一方で、人工衛星の軌道追跡より得られる重力場の情報は米国や日本の探査衛星により次々と更新されています。本論文では、まず2007-2009年に日本の月探査衛星「かぐや」で得られた月重力場データとApolloの月地震データを組み合わせて、月の内部構造がどこまで分かるか調べました。その結果、月の浅い部分(地殻-上部マントル)についてはそれなりの精度(5-6%の誤差)で決定できますが、月の深い部分、下部マントルについては大きい誤差を持ってしか決定できない事が分かりました(図2)。また、月中心部にあるとされる金属の核についてもその大きさや密度について、大きな不確定性をもった値でしか決定できない事も分かりました。現状のデータだけからでは、月の深い部分の構造について解明する事はできません。

 

 そこで、新しい二つの月重力場探査データを利用する事について考えました。一つはNASAにより2011-2012年に実施されたGRAIL (Gravity Recovery and Interior Laboratory) ミッションで得られたデータです。そして、もう一つが現在、日本の次期月軟着陸探査 SELENE-2の中で計画している重力場探査で期待されるデータです。SELNE-2ではVLBI(Very Long Baseline Interferometry)という手法を用いて、人工衛星の軌道の追跡を精密に行います(図3)。 (SELENE-2での月重力場探査の詳細についてはhttp://www.miz.nao.ac.jp/rise/instruments/vlbiを参照) 。GRAILミッションは2012年12月にすでに終了しており、この探査で得られたデータから月の重力場に関する知識が大きく改善されました。また、数値シミュレーションからSELENE-2での重力場探査でも同様の成果を得ることが予測されています。本論文の研究では、このGRAILの重力場データ、またはSELENE-2の重力場データとApolloの地震データを組み合わせる事によって、特に月の中心核に関してより正確な情報を得られる事を我々の数値計算から示す事ができました。特に月の核の大きさについてはおよそ10%の精度で推定できるようになる事が期待できます。現在、月の中心部の構造がGRAILのデータとApolloのデータを使ってどのように決まるかを、RISE内外の研究者と共に調べています。

 

 一方、重力場の探査では間接的に内部を調べるため、ある仮定に基づいて中心部の構造を推定する事になります。月の深部がどうなっており、月の核が何からできているかを明確にするためには直接的に月の深部、中心部を伝わってきた地震波を観測する必要があります。将来の月地震探査で、高精度に地震波が観測できれば、月の深い部分の構造がより明らかになる事もこの論文では述べています。しかし、現状、まだまだ月の内部については謎が残っていると言えます(図4)。論文に興味のある方は上記の[DOI]からアクセスしてみてください。   

 (文責 山田)