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ベルリンのアルヒェンホルト天文台


ベルリンにあるトレプトウ公園(Treptower Park)は、10万m2もの広大な敷地をもつ市民の憩いの場であり、また、第二次世界大戦のベルリン市街戦でナチスと戦ったソ連兵士のための慰霊碑がある場所としても知られています。この公園の南東の一角にあるアルヒェンホルト天文台(Archenhold-Sternwarte)には、1896年、ベルリン産業博覧会の際に建設された、長大な屈折式望遠鏡(通称Sky-Cannon)が現在も稼働できる状態で残されています。

 

 

この望遠鏡の焦点距離は21mあり、建設当時、世界最長でした。元々この望遠鏡は、天文学者フリードリヒ・アルヒェンホルトが自身の天文学研究のために設計したのですが、研究目的での建設は厳しいと判断されていたところ、ベルリン産業博覧会の開催責任者らがこの望遠鏡の見た目のインパクトの大きさに注目し、博覧会において一般市民に科学、天文学の知識を公開するための展示施設の一つとして、建設されることとなりました。当初の目論見では、望遠鏡の建設費と博覧会終了後の(公園の現状復元のための)移転費は観覧料を使って賄われる予定でしたが、実際には望遠鏡の建設が大きく遅れ、博覧会開催期間のうちのごくわずかな期間しか公開されませんでした。その結果、移転予算の拠出が困難となったこと、一方で望遠鏡の公開自体は大好評だったということから、最終的に、市はこの望遠鏡を公園内に留めおいても良いという許可を与えました。しかし、この望遠鏡を用いた研究のための資金獲得は困難であり、アルヒェンホルトはこの遺構をドイツ初の一般市民の教養向け公開天文台としてスタートさせることを決断し、初代所長に就任しました[1]。

ここでは、天文、地球、月、惑星、光学機器などの様々な展示が行われ、多くの来場者で賑わうようになりました。アルヒェンホルトはまた幅広い人脈を持ち、1915年にはこの天文台で、アルバート・アインシュタインが一般相対性理論についての初のベルリンでの講演を行いました[2]。

 

 

その後、第二次世界大戦時代、東ドイツ時代を経て、現在はベルリンのドイツ技術博物館に属する施設の一つとなっています[3]。児童、生徒の天文学、物理学教育に使用されているほか、一般向けの観望会やレクチャーなどもおこなわれています。曜日、時間が限られていますが、ガイドツアーに参加すると、望遠鏡の仕組みについての詳しい解説の後、実際に望遠鏡が動く姿を見学することができます。日没後の見学で、天気が良い場合は、この望遠鏡から星空の観測もさせてもらえるそうですが、私が行った時は残念ながら曇りで、代わりに東ドイツ時代に作られた直径8 mの小型プラネタリウムで、ベルリンの冬の星空について解説をしてくれました。(北斗七星はドイツ語で大きな荷車(Großer Wagen)と言うそうです。解説者曰く、「ドイツは工業技術の国だから」らしいです。)

 

 

自由見学できる内部の展示室には、測地学、天文学の数々の歴史的な観測機器の展示のほか、地球の形状、月探査、惑星科学についての最新の解説がありました。一隅には、海王星を観測によって発見したベルリンの天文学者、ヨハン・ゴットフリート・ガレの胸像がありましたが、特に詳しい説明はありませんでした。そのことをドイツ人の同僚に報告すると、ガレの業績は重要であり、もっと積極的にアピールすべきなのに、と残念がっていました。実際に海王星の発見がなされたベルリン天文台は現存しておらず(使用した望遠鏡は、ミュンヘンのドイツ博物館に展示されています)、そのためか、ベルリンの一般市民でガレの名を知っている人はとても少ないそうです。

 

 

アルヒェンホルト天文台は、ベルリン中央駅から電車(Sバーン)で20分弱のTreptower Park駅、またはその次のPlänterwald駅が最寄りの駅です。駅から少し歩きますが、ご興味を持たれた方、ベルリンに行かれることがあれば是非訪問してみて下さい。

(文責 山本)

参考:

[1]http://www.berlin-travel-sightseeing.com/museen-edenkstaetten/Archenhold-Sternwarte-Treptow.html

[2]http://www.einstein-website.de/z_biography/einsteinarchenhold-e.html

[3]http://www.planetarium.berlin