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LLR ~月の内部構造を推定~


月の回転変動と潮汐変形から内部構造を探る

月レーザ測距(LLR: Lunar Laser Ranging)とは、米国のアポロ計画、旧ソ連のルナ計画で月面上に設置された逆反射板に地上からレーザ光線を当て、月面と地球の距離を直接測る技術です。

月の自転と公転は同期しているため、月はいつも同じ側を地球に向けています(この面が月の表側です)。月ができた頃は今より速く回転していたはずですが、地球との角運動量交換を通じて徐々に遅くなったと考えられています。しかし、月の軌道面の法線、回転軸、そして黄道面の法線が同一平面上になる「カッシーニ状態」と呼ばれる安定状態と比べて、現在の月は少し自転軸が面外にあることがLLRデータの解析から分かっています。粘性を持つマントルで、潮汐によりエネルギーが散逸する他、流体核とマントルの間での摩擦によってもエネルギーが散逸しているためだと考えられています。新しい反射板を設置してより高精度の回転変動計測をLLRで行うことによって、月の内部構造をより詳しく知ることができることが期待されます。

LLRで測る月面―地球間距離には、回転変動の他、月の固体潮汐の成分も含まれます。地球の海が干満を繰り返すのは、月からの力(潮汐力)を受けるためですが、表面が固体である月でも同じことが起こります。つまり、地球からの潮汐力を受けて、ラグビーボールの形のように月が少し変形します。前に書いたように、月の表側が常に地球に向いているため、主要な成分は固定していますが、月から地球を見ると、振幅10度程度での周期的な動きが見られます。そのため、潮汐による月面の変位も周期的に起こります。この変化の量は、月の内部がどのくらい柔らかいか、によって決まります。そのため、潮汐からも内部構造を知ることができるのです。

月面に新しい反射板を!

これまでのLLR観測ではアポロ15号の寄与が約80%を占めています。月の回転をより正確に観測するため、アポロ15号から遠い地点(目安として2000km以上)に効率の良い反射体を設置することが望まれています。

アポロ計画では、直径3.8cmのコーナーキューブプリズム100個または300個を一つの平面に敷き詰めていました。過酷な月面の温度に耐えるには良い設計ですが、反射する信号のパルス幅が長くなり、測距精度が数cm以下にならないという欠点があります。そこで我々は情報通信研究機構(NICT)や一橋大学の専門家と連携して、日本の次期月面着陸船SELENE-2に搭載することを目指して、口径の大きい一素子の逆反射板を開発しています。また、2012年にはアメリカ・メリーランド大学およびイタリア・核物理学研究所(INFN)とも共同研究協定を締結して、共同研究を進めています。

日本以外の月着陸機にも同様の逆反射板が搭載されれば、より強固な観測網が実現します。

国内の地上観測局を整備

日本国内には、宇宙航空開発研究機構(JAXA)、情報通信研究機構(NICT)、海上保安庁海洋情報部が保有する衛星レーザ測距用の地上局設備が存在しますが、いずれも月までの距離を測れるだけの強いレーザは持っていません。今後、国内に1.5mクラスの月レーザ測距望遠鏡を整備したいと考えています。