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VRAD / RSAT ~月の重力場を測る~


月の裏側の重力場

月の裏側の写真はソ連の無人月探査機ルナ3号によって初めて撮影されました。1959年のことです。しかし、月の裏側の詳細な重力場の様子は長い間謎のままでした。一般に天体の重力場は人工衛星の追跡データを解析して知ることができます。人工衛星は天体の重力場の影響下で運動するので、電波を利用して人工衛星の運動を追跡すれば逆に重力場を推定できるのです。しかし、月はいつも表側を地球に向けているため、人工衛星が裏側に隠れて電波が届かなくなると地上からの追跡ができなくなります。これが月の裏側の重力場がよく分からなかった理由です。そこで、「かぐや」(SELENE)のRSATミッションでは、小型のリレー衛星を楕円軌道に投入し、裏側を飛行している「かぐや」の追跡信号(ドップラー信号)をリレー衛星で中継する(図1)ことによって、月の裏側の重力場を世界で初めて直接観測しました。図2は裏側の重力場の様子(重力異常)を「かぐや」の前後で比較したものです。RSATミッションにより、衝突盆地に対応した同心円状の重力異常をはっきりと捉えることができました。

相対VLBIによる人工衛星追跡

SELENEでは、かぐやとリレー衛星の他にもう一つVRAD衛星と呼ばれる子衛星も軌道に投入しました。二つの子衛星にはVRADと呼ばれる人工電波源が搭載されており、この電波を複数の地上局で受信する相対VLBI(図3)という観測手法を用いて高精度軌道決定を行いました。従来の観測量である距離(レンジ)および距離変化率(ドップラー)に相対VLBI観測量を加えることにより、軌道精度が向上することが確認されました(図4)。また、複数の人工衛星を複数種類の観測で追跡することにより、全体として精度の良い月重力場モデルを開発することができました。

地下構造の推定

重力異常は主に表面の凸凹(地形)と地下の凸凹(地殻とマントルの境界面の形)によって作られます。LALTによって全球にわたる詳細な地形データが取得できたので、このデータを用いて表面地形が作る重力の影響を計算して補正すれば、地下構造の情報を取り出すことが出来ます。図5はこのようにして作られた地殻の厚さの地図です。この図は月の基本情報の一つとして、鉱物分布の解釈などにも利用されつつあります。