第12回目の意中の人は
秦和弘さん

草食系ブラックホールと肉食系ブラックホール

というわけで、宇宙のいろんなブラックホールを観測してみると、人間と同じようにブラックホールにもそれぞれ性格があることがわかりました。たとえば、すごく活発にジェットを吹き出していて「自分を見せびらかしたい」っていうブラックホールがいます。僕は肉食系ブラックホールって呼んでいるんですけれども(笑)。一方で、「あんまり僕のこと見ないで」みたいな奥ゆかしいブラックホールがいたりする。こっちを草食系と呼んでいます。そうかと思うと、ほとんど活動していない「絶食系」のブラックホールもいたりするんですよね。

マダム

性格診断みたいで、おもしろいです。

たとえば、ソンブレロ銀河っていう有名な天体の真ん中にブラックホールがあることは以前から知られていたんですが、具体的な姿は誰も知らなかった。そこで僕たちはVLBIを使って、中心のところを詳しく見てあげたんです。そうしたら、なんとびっくり!全然活動してないと思われていたブラックホールに、じつは、ちょっとだけ「ぴょっ」と。僕も吹いているよと。

マダム

かわいい♡

ちょっと控えめなジェットで、おまえ、かわいいヤツだなっていう気持ちになってきますよね(笑)。で、こっちのM87っていう天体は、控えめどころか、びゅうううって、思いっきりジェットが出ています。

マダム

ソンブレロちゃん萌え!M87ちゃんにはどんな魅力を感じますか?

M87ちゃんは肉食系ブラックホールの代表です。いつも活発で元気良くて「ホントにおまえは楽しいやつだな」っていう、見ていてあきない天体ですね。AKB48に例えると常にセンターポジションっていう、天性の才能をもったブラックホールです。研究者にはこの子のファンが多いですよ。

マダム

楽しい♡草食系と肉食系はどっちが多いんですか?

活動的でアピール上手な肉食系ブラックホールって、じつは1割くらいしかなくて、理由もまだよくわからないんですよ。でもそこが一番知りたいところなんですよね。なんでブラックホールにいろいろな性格があるのか、その原因は何だろうか、というのは世界中の研究者たちが知りたいことですね。

秦 和弘
氏名
秦 和弘 はだ かずひろ
出身地
島根県生まれ
紹介

アジアや欧米の人たちと協力しながら地球規模の望遠鏡を形成する取り組みを進めています。ブラックホールと仲良くなって自分にだけコッソリ秘密を教えてもらうために、できるだけ頻繁に会話(=観測)をするように心がけています。またブラックホール本体の写真撮影を目指す国際プロジェクト「Event Horizon Telescope」のメンバーとしても活動しています。

ハッブル宇宙望遠鏡によるソンブレロ銀河の可視光画像(NASA)

秦さんの研究成果はこちら

「視力50万の瞳」が捉えたソンブレロ銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの周辺構造

M87

約5400万光年彼方のおとめ座銀河団にある楕円銀河。中心に太陽の約62億倍の質量を持つ超巨大ブラックホールを持つ。