第15回目の意中の人は
小林秀行さん

副台長の仕事

マダム

副台長の仕事についてお聞きします。普段どんなことをされているのでしょうか。

小林

私は天文台の財務を担当しています。予算を獲得して、それを台内の各プロジェクトにVERAはいくら、野辺山はいくら、アルマはいくら…と配分する仕事です。

マダム

ひゃ~!各プロジェクトの予算は小林さんのさじ加減にかかっているんですね。各プロジェクトに予算を配分するまでの流れを教えてください。

副台長として財務を担当
副台長として財務を担当
小林

まずは、国からの予算を得るために「概算要求」をします。それについて文部科学省(以下、文科省)に説明するための準備を、各プロジェクトと一緒にやっていきます。なんでこんなに必要なのかとか、どうして来年必要なのかとか、そういうことをいろんな審議会で説明して予算を得て、次年度の天文台全体の予算が決まります。そうしたら今度は各プロジェクトから上げられた予算要求の内容を見て配分するんですが…。

マダム

予算は足りるんでしょうか?

小林

全然、足りない!(キッパリ)だから査定をしていくわけです。これは来年に回せるでしょう、とか、こういうところは削減できるじゃないかって。そうすると、みんな不満を言うよね。

マダム

各プロジェクトから不満を言われながら査定を?

小林

そう。誰も満足しない!

マダム

ああ…。

小林

私が副台長になった年は、アルマの建設予算が足りなくて非常に苦労しました。アルマ全体の建設費用の4分の1を日本が受け持つんだけど、文科省からはその金額の予算が下りなかった。でもアルマの予算は作らないといけないから、台内でかき集めるわけです。

マダム

他のプロジェクトの予算を削って…ですか?

小林

そう。でもね、そうやっていろんなところからお金を集めて、なんとかアルマをつくり上げても、それで他の研究が死んじゃったら意味がないわけです。だから他のプロジェクトもなんとかやれるようにする。それが大事なんですよね。

マダム

集中的にお金が必要な時期はそこへ投入しつつ、全体を見極める。なんだか会社経営に似ていますね。ちなみに副台長は2人いらっしゃいますが、小林さんと渡部さんはどのような役割分担なのでしょうか?

小林

役割分担は財務と総務です。お金に関することは私。それ以外は全部、渡部さんです(笑)。

小林 秀行
氏名
小林 秀行 こばやし ひでゆき
出身地
東京都生まれ
紹介

千葉県育ち。野辺山ミリ波電波干渉計で学位を取得後、スペースVLBI計画のVSOPでは、衛星のシステム、観測システム、地上相関器システムの開発を進めた。VERAでは、プロジェクトマネージャとして、建設・性能出し・運用システム構築を進めた。またVERA、日本国内VLBI網の発展として東アジアVLBI網の構築を進めている。2010年から国立天文台財務担当副台長。

もう一人の副台長(総務担当)渡部潤一さん

国立天文台教授。専門は太陽系天文学。2006年、国際天文学連合の「惑星の定義委員会」委員の1人である。テレビ等メディアへの出演や一般向けの著作も多い。海外の人から作家の渡辺淳一氏とまちがえられ「あなたの著作“Lost Paradise”を翻訳したいのだが…」というメールが届いたことがある。