第19回目の意中の人は
亀谷收さん

新しい手法で古い望遠鏡が生き返る!

亀谷

見学中に、もし幸運にも10mアンテナが動く場面に遭遇したら、動くスピードに注目してみてください。高性能の駆動系を使っているので急にグワーッと速く動いてピタッ!と止まります。古くなったとはいえ、まだまだ十分使える。世界には完成から50年以上経っても現役で活躍している電波望遠鏡があります。ジョドレルバンク天文台の76m鏡とか、パークス天文台の64m鏡とか。定期的に保守をすれば、この10mアンテナも50年以上使えると思うんですよね。

電波吸収体を10mアンテナの受信機に被せて…
電波吸収体を10mアンテナの受信機に被せて…
亀谷

実はいま10mアンテナを使って、新しい研究をやろうと思っているんです。今日も10mアンテナに登って、そのための準備作業をしました。

マダム

どんな研究なんですか?

亀谷

最近、VLBI観測によってパルサーまでの距離を精密に測れるようになってきました。周波数に対しパルス到達時刻がどれくらい遅くなるかを調べると、その割合からパルサーと地球の間にある電離ガスの量がわかります。距離がわかれば平均密度がわかるので、今まで測定されたパルサーについてまとめていくと、この辺は密度が高い、この辺は低いという対比がつけられる。つまり、天の川銀河の中の構造が非常に詳しく分かり得るんですよ。

マダム

面白いですね。古い望遠鏡を使って新しい手法で!

亀谷

今後の研究として、まずは10mアンテナでパルサーのVLBI観測をしたいと思っています。残念ながらVERAではまだパルサーまでの距離を測ってはいません。とはいえ、VERAでも低い周波数の受信機を入れて試験観測を始めているんですよ。早くVERAで参加したいと私は思っています。

亀谷さんにとってVERAとは

マダム

亀谷さんにとって、VERAとは何でしょうか。

亀谷

子どもみたいなものです。産みの苦しみも含め、手塩にかけて育てた大事な子どもですね。

マダム

実感がこもっていますね。亀谷さん、どうもありがとうございました。パルサーの観測に期待しています!

亀谷 收
氏名
亀谷 收 かめや おさむ
出身地
北海道生まれ
紹介

1956年帯広市出身、東京育ち。埼玉大学卒業後、東北大学大学院理学研究科で修士、大質量星形成領域の電波天文学研究で理学博士(1986年)。野辺山宇宙電波観測所研究員等を経て、1990年に国立天文台水沢に採用され、現在、水沢VLBI観測所助教。趣味は、合唱、フルート演奏(上手ではない)など。零式艦上戦闘機(ゼロ戦)が好き。1993年設立の日本宇宙少年団水沢Z分団の分団長を務めています。

10mアンテナが動くスピード

VERAアンテナの1.5倍速く動く。ちなみに野辺山45m鏡より10倍速い。

ジョドレルバンク天文台(イギリス)

1957年に完成した口径76mのラヴェル望遠鏡は現在もVLBI観測網のひとつとして運用を続けている。

パークス天文台(オーストラリア)

1961年に完成した64m電波望遠鏡を用いて電波天文学を推進している

パルサー

自転によって電波からガンマ線に至る幅広い電磁波を一定周期で発する天体。「宇宙の灯台」と呼ばれる