前職はSONYのメカニカルエンジニアという経歴をお持ちの金口さんですが、まずはVERAプロジェクトでの仕事と役割について教えていただけますか。
はい。各観測局(水沢・入来・小笠原・石垣島)のアンテナで観測した電波信号を記録する機械の保守と、その記録した信号を処理する相関局(三鷹)の管理が私の主な仕事です。
どのような機械なんでしょうか。
アンテナから取り込まれた電波信号は、「DIR」というレコーダーを使って、この業務用デジタルテープに記録しています。
テープが大きい!
これ1本で80分の記録ができます。観測は24時間体制で行われるので、途中でテープ交換をします。
80分ごとに交換していたら、寝られないのでは?
テープを自動交換するオートチェンジャー「DMS」という機械があります。DMSには32時間分のテープをセットできるので、1日とちょっとは寝られますよ(笑)。
寝られて良かった♡ それは冗談ですが、それにしても、24時間の観測をすると18本のテープが4局分で72本!大量のテープが必要なんですね。
はい。それをどんどん宅配便で三鷹の「相関局」へ送ります。情報量がとても多いので、光ケーブルとかで直接データを送ることができないんです。そうやって送られてきたテープを相関局で再生して信号を読み取り、「相関処理」を実施しています。
相関処理とはどのような処理なんでしょうか?
おおまかに言うと、各局から送られた信号を時間ピッタリ合わせてまとめ、信号を重ね合わせる作業が相関処理です。相関器は24時間稼働しているので、処理をする人たちがスムーズに作業できるようサポートするのも、私の仕事ですね。
24時間!コンビニ状態なんですね。
観測を24時間態勢でやってますから、こちらも24時間態勢でないと処理が追いつかない。しかもDIRってリアルタイム(=1倍速)でしか再生できないんです。2倍速、3倍速での処理ができない。
観測した時間と同じだけ再生しないといけないんですね。
そう。アンテナが24時間動いたら、24時間テープを再生しないとダメ!三鷹相関局でトラブルが起きると、アンテナがせっかく記録をしているのに、相関処理がどんどん遅れていってしまうので、そこを管理するのも私の大事な仕事の一つです。
記事公開日:2014年9月20日
国立天文台水沢VLBI観測所の専門研究職員として観測用機械の保守、管理、サポートや、相関処理を実施する相関局の管理をしています。2010年までSONY(株)に勤務。現在、VERAで使用しているデータレコーダー「DIR」の設計、開発に携わりました。片道2時間通勤のため早目に帰ることが多いのですが、飲ミュニケーションは大好きです。