第5回目の意中の人は
田村良明さん

なぜVERAで測地学が必要か?

マダム

天体観測のプロジェクトなのに地面を測っているのが不思議なんですけれど、VERAと測地がどう関係あるのか教えていただけますか?

田村

天体の位置を精密に決めるには、まずアンテナの位置を正確に決めておく必要があるんです。そのためにアンテナの位置を精密に測っています。

この図は2013年にアンテナの位置を決める観測を行った結果ですが、一番遠い水沢局と石垣島局のアンテナの距離が、2270キロ416メートル91センチと1ミリ。

水沢観測局と石垣島観測局の距離
水沢観測局と石垣島観測局の距離
マダム

すごい!ミリメートルの桁まで。

田村

そうなんです。ミリメートルまで測っていますよ。2千キロメートルに対して2ミリというのが9桁目ですから、9桁の精度で測っています。10億分の1の精度です。

マダム

なるほど。VERAが天体の年周視差を10マイクロ秒角という究極の精度で狙えるのも、測地がきわめて正確だからこそ、なんですね。

田村

はい。測地はしっかりやっています。アンテナの位置の精度が悪いから10マイクロ秒角の精度が出ない、なんていうことは言わせないよ(笑)。ミリメートルの精度までだしていかないと、究極の精度が出ないので、アンテナの位置を決める測地観測というのを月に2~3回やってます。

測地観測を説明中
測地観測を説明中
マダム

何時間かけて観測するんですか?

田村

4局同時に24時間かけて観測しています。もしどこか1局にトラブルがあって観測に参加できない場合は3局の位置を決めます。潮汐によって観測点が毎日10センチから30センチも動きますからね。潮汐は予測値を出して解析しますが、もろもろ変動があるかもしれないので、24時間観測して平均値を出します。

マダム

ありがとうございます!潮汐とVERAの関係もつながりました。

田村 良明
氏名
田村 良明 たむら よしあき
出身地
大阪府生まれ
紹介

国立天文台水沢VLBI観測所でVERAの測地を担当しています。

江刺地球潮汐観測施設やGPS、重力計などの観測装置を用いた地殻変動を研究しているほか、世界の座標系の中でアンテナの位置を決めるVLBI観測の国際プロジェクトにも協力しています。

古地図の魅力にはまっていて、古い地図を集めるのが趣味です。

マイクロ秒角(角度)

1周の360分の1が1度角、1度角の3600分の1が1秒角。1秒角のさらに100万分の1が1マイクロ秒角

10マイクロ秒角

VERAの目標精度である10マイクロ秒角は3億6千万分の1度。地球から見て、月面上に置いた1円玉の上下が判別できる精度に相当する。詳しくは こちら

測地観測

測地観測の時は大気の状態が変わらない間に色んな方向の星を観測します。そのため、早いときは2、3分でアンテナがまったく別の方向を向きます。次々と向きを変える測地観測の日は、アンテナ見学には打ってつけです。