第6回目の意中の人は
上野祐治さん

私もアンテナを測っています

上野

あと、機械計測という重要な仕事がありまして、アンテナが地面に対して正しくまっすぐ建っているか、回転する部分の軸がどのくらい傾いているかなどを、VERA4局をまわって毎年測っています。

マダム

前回、田村さんにお話いただいた、地球の表面に対してアンテナがどれくらい動いたかを見る測定とはちがうんですね。

上野

はい。私はもっと局所的な部分を見ます。建っている箇所の傾き、レールのでこぼこ、構造物としての動きを精密に見ています。たとえば、アンテナが乗っている丸いレールを精密に測ると0.05ミリの精度ででこぼこ具合が見えるので、それによってアンテナが傾いていないか、動かすときにガタガタしていないか調べます。

フィドーム膜の開発

マダム

開発の仕事もなさっていましたよね。

上野

はい、フィドーム膜の開発をしました。アンテナのお皿の中心にある丸い部分に張ってある膜です。1枚張っただけだと風でバタバタ動いて中の機材に接触してしまうので、太鼓のように筒の両端に膜を2枚張って、さらに中に空気をいれて膨らませているんですよ。

マダム

へえ!

上野

VERAは2つの天体の電波を受けるために受信機を2台離して置いているから、電波が入ってくる口が3mと大きいんです。口が小さければ色々と方法もあるのですが、3mもあって、さらに電波が通過するときのロスも抑えないといけない。そのため、特殊な膜材を開発する必要があって、それを任されたんです。

受信機室からフィドームの膨らみ具合を確認
受信機室からフィドームの膨らみ具合を確認
マダム

機械と膜って、まるっきり畑違いじゃないですか。

上野

はなはだ畑違いです(笑)。膜材の会社と協力して開発を始めたんですけれど、機械とは全くノウハウがちがう。ほとんど膜材メーカーさんに教えてもらうんですけれど、でも膜をアンテナに取り付けるのはボルトや機械部品なんですよね。

マダム

うんうん。

上野

そういった機械部品に関しては、可能な限りこちらからノウハウや部品を提供させて頂いて相互協力ですね。私の方でちょこちょこ部品を設計・製作し「こういうのじゃダメかな?」って何度も持って行って、もうホントに協力のたまもので完成しましたね。

マダム

やっぱり協力!

上野

うん。大きなアンテナなので、一から十まで一人でやるっていうわけにはいかない。本当に周りの人たちの協力あってこそです。

上野 祐治
氏名
上野 祐治 うえの ゆうじ
出身地
岩手県生まれ
紹介

国立天文台水沢VLBI観測所の技術職員としてVERAアンテナ4局の機械系保守、開発、観測の運用支援を行っています。仕事で着用するツナギは機能性とデザインにこだわって選び、現在6着を所持。長期の出張が多いので、自宅では家族との時間を大事にしつつ家事をして体を動かします。趣味はロッククライミング。

前回、田村さんにお話いただいた内容

VERAに夢中!第5回を参照

VERAのフィドーム膜

受信機室を保護するための薄い膜。樹脂製の膜素材を採用し機械的強度を維持しつつ、電波が通過する際に生じるロスを最小限にする設計がなされている。

フィドーム