第8回目の意中の人は
秋山和徳さん

他分野のおもしろい方法を試す

マダム

今度は秋山さんの研究成果を教えて欲しいんですが、博士論文でどんな成果を発表したんですか?

秋山

まず、これまで技術的、解析テクニック的に困難なため検出できなかった重要な情報をサブミリ波VLBIで初めて取得できたこと、さらに、そのデータから2015年以降、実際にブラックホールの写真がちゃんと撮れると初めて明示したこと。あとは、タンパク質のシミュレーションに使われている方法を取り入れて、天体の絵の復元に成功したことです。その絵の復元技術はブラックホールの写真の復元にも使えるテクニックで、自分で着想して作りました。あと、そうやって復元した絵からも、おもしろいことがいくつかわかったんです。

マダム

いくつも成果を出しているんですね。発想の部分も目を引きます。

秋山

自分で方法を編み出すとか、革新的な事をやるというよりは、天文では使われていないけれど、他の分野では使われているおもしろい方法を試してみるのが好きなので、それがいろんなことに繋がってますね。

アメリカへ渡り日本の技術で勝負する

秋山

じつは僕、9月からアメリカへ行くんです。EHTを主導する機関の一つであるマサチューセッツ工科大学へ。日本って独自の強いテクニックを持っているんですよ。EHTで必要なデータが揃う。僕らは手法を持ってる。じゃあ合わせてブラックホールの写真を撮ればいいじゃない、っていう研究計画を出して日本学術振興会の海外特別研究員に採用されたんです。

マダム

国立天文台ではやらないんですか?

秋山

もちろんやるんですけれども、今後数年で一気にデータがとれるので、僕たち日本の研究者が中央部でEHTに大きく貢献して存在感を発揮していかないと、おいしいところには手を出せないんです。

マダム

つまり、アメリカに乗り込んで行くんですね!

アメリカに乗り込んで日本が持つ技術で勝負する
アメリカに乗り込んで日本が持つ技術で勝負する
秋山

そうですね。僕らもちゃんとしたデータにありつけるように乗り込んで行かないと(笑)。僕の読みでは今後数年以内にデータ自体は揃うと思います。非常に重要なデータなので、正しく解析して、約100人のメンバーが納得するクオリティに持っていくには、さらに1年くらい時間と労力がかかるんです。僕たちがまさにやらなきゃいけないことなんですけれども。

マダム

EHTのメンバーって100人くらいなんですか?

秋山

研究者の数が100人くらいです。100人ぐらいのプロジェクトだと、それなりに自分のアイデアを利かせられるので、ちょうどいい感じなんですよ。

秋山 和徳
氏名
秋山 和徳 あきやま かずのり
出身地
東京都生まれ
紹介

国立天文台 水沢VLBI観測所のメンバーも参加して国際的に進められているEHTプロジェクトの一員として、ブラックホールの人類初の写真撮影に向けた準備研究を行っています。
またブラックホールから噴出するジェットとよばれる不思議な現象の研究をはじめとした、ブラックホールの近くで起こる高エネルギー現象の観測的研究をVERAや日韓VLBI観測網などを用いて行っています。

VLBI

超長基線電波干渉法 超ざっくり説明すると、複数の電波望遠鏡で観測したデータをかけあわせて、ひとつの巨大な電波望遠鏡と同等の性能を得る方法。くわしくは、こちら

いて座A*、おとめ座A

秋山さんたちが直接撮像のターゲットにしているブラックホール

いて座A*(いてざエースター/Sgr A*)

地球から約2万6000光年の距離にある、太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホール。

おとめ座A(M87)

約6300万光年彼方のおとめ座銀河団にある楕円銀河(M87)。中心に太陽の約62億倍の質量を持つ超巨大ブラックホールを持つ。

研究目的

くわしくは、こちらを見て