1. 研究の背景: 我々の住む天の川銀河はどんな銀河か?

我々の住む天の川銀河はどんな大きさや重さ、形状を持つ銀河なのでしょうか?天の川銀河は渦巻き銀河であることはわかっていますが、その正確な大きさや形状、回転速度などはまだはっきりしていません。その最大の理由は我々が天の川銀河の中にいるために、天の川銀河を外から見渡すことができないからです。天の川銀河に中にいる私たちがその全体像をつかむためには、天の川銀河の中にあるたくさんの星について個々の距離を正確に測定し、天の川銀河を上空から見渡した「天の川銀河の地図」を作ることが必要になります。

 

写真: VERAから見上げる天の川。天の川銀河の正確な大きさや重さ、形状は未知である。

 

天体の距離を仮定なしに測定するためには、地球が太陽の周りを周回することによって発生する三角視差(年周視差)を利用します(図1参照)。しかし、この年周視差はとても小さいので(太陽から最も近い星であるケンタウルス座αでさえ1秒角以下)、これまで年周視差が計測できた領域は太陽系から1000光年以内に留まっていました。これは、例えば太陽から天の川銀河の中心までの距離(後述するように約26100光年)に比べて、ずっと小さな領域になります。このために天の川銀河全域の測量は現代天文学に残されたフロンティアなのです。

図1: 年周視差測定のイメージ。地球が太陽の周りを1年で公転するため、例えば夏と冬では天体の位置(地球から見た方角)はわずかに変化する。この天体位置変化を年周視差と呼ぶ。遠い天体の視差は小さく、近い天体の視差が大きいため、視差を測れば天体までの距離がわかる。


 

2. 研究の手法: 電波干渉計による精密な三角測量 へ  

 

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