研究の背景

太陽のような星(恒星)のなかでも、太陽の8倍以上の質量をもつ大質量星の形成過程は、中小質量星の形成過程ほど理解が進んでいません。大質量星は、中小質量星と同じように宇宙空間の希薄なガス(星間分子雲)が重力によって集まってできるのか、それとも星同士の合体など全く違う形成過程なのか、という簡単な疑問にさえ、まだはっきりと答えることができないのです。大質量星が生まれている星間分子雲のほとんどは、太陽系から遠く離れた場所にあります。星はガスやダスト(星間塵)の中で誕生しますから、星形成の現場を観測するためにはガスやダストそのものを観測できる電波望遠鏡による観測が不可欠です。また、詳しく観測するには空間分解能が高い電波干渉計による観測が有利です。しかし、これまでの観測装置では、感度や空間分解能が足りず、形成の現場を詳しく観測することができませんでした。

すばる望遠鏡によるオリオン大星雲の赤外線写真

図1. すばる望遠鏡によるオリオン大星雲の赤外線写真。右上に見えるオレンジの星雲にオリオンKLがあります。赤丸は、本研究でアルマ望遠鏡が観測した範囲(視野)です。