意義

メーザー放射は特殊な物理条件(ガスの密度・温度・メーザー放射をする分子の割合)でのみ実現します。そのようなメーザーのうち、励起に必要な温度が大きく異なるはずであるv=1およびv=2のSiOメーザーがほぼ同じ部分で見られることが分かり、この条件を満たす仕組みを説明する物理解釈モデルに非常に強い制限が与えられます。さらに、これらメーザー放射域の相対位置が、星の明るさと共に変化するのではないかという指摘があります。今回の観測ではその変化までも正確に捉えられる可能性を実証しましたが、そのために要する複数の観測手法がVERAとKVNの組み合わせによって一回の観測で同時実行できます。このような観測を今後連続的に実施すれば、星の最終進化における物質放出の観測的研究で世界をリードすることができます。

今回の研究成果は、KaVAを主導する3つの研究分野(星形成、晩期星、活動銀河中心核)が5年間掛けて行われてきた重要研究課題への取り組みによって得られた初期成果の一つです。これをもってKaVAの準備事業が完了し、上記連続撮像を含めた大規模な観測研究の機会がKaVAで実現し、KaVAが世界の研究者に対して公開されることになります。こうして、電波天文学において世界的に独特な地位を、KaVAは築くことになるはずです。

 

図:KaVA観測で得られた、2つの異なる振動励起状態のSiOメーザーの分布を重ねた図。KaVAで詳細な構造まで撮影することができ、年老いた星の周りの領域の物理状態を調べるのにKaVAが適していることを示している。