ブラックホールを研究しようと志したきっかけやエピソードがあれば教えて欲しいのですが。
大学生のとき、日本に電波天文学の分野で、ある特定のマニアックなポイントを極限まで追求する「ぶっとんだ観測装置」があると知ったんです。それがVLBIなんですけど(笑)。極限の視力を追求しますっていうプロジェクトで、それをやると、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の100倍も1000倍も解像度がよくなって、どんな観測装置よりも詳しくブラックホールのことがわかるっていう話を聞いたんです。
視力をあげることに特化して、ピーキーな性能を得るんですね。
そうです。たとえば、すばる望遠鏡ってホントに万能で王道なんですけれど、それからすると、VLBIって邪道なんです(笑)。極限の視力を得るかわりに、絶望的に感度が悪くてノイズが多いっていう代償がある。だから観測できるのは、宇宙のなかでも、ものすごく活発な現象だけに限られるんです。
観測できる天体が限られているから、万人受けはしないと。
そう。自分は逆にそういうニッチなところがすごくおもしろいと思ったんですよ。
それで、VERAの兄弟にあたるスペースVLBIっていうプロジェクトに参加して、ブラックホールを研究するようになりました。