天の川銀河の腕は何本?

天の川銀河の腕は何本?

坂井

天の川銀河がどういう渦状の構造をしているのかを調べるのもVERAの科学目標のひとつです。僕が一番最初に距離測定に成功した天体はI05168というんですが、この天体は太陽から一番近い腕であるペルセウス腕に位置していることがわかったんです。しかも、その腕にそって特徴的な運動が見られるんですよ。回転成分を差し引いてもまだ運動成分が残って、数値的にも視覚的にも明らかに系統的なものが見られる。

マダム

うん、うん。

坂井

せっかくなので、ペルセウス腕全体で確かめて、その運動をもっともうまく説明できる天の川銀河のモデルを作れないだろうかと。そこで「天の川銀河には渦巻き状の構造と重力場がある」と仮定をおいて、どういう渦巻きが天の川銀河にあるかを、いろんなモデルをつくってシミュレーションしたんです。腕の巻き込み具合をきつく閉じたものから緩く開いたものに変えていって、もっとも観測と合うモデルを探しました。すると、天の川銀河の腕の数は4本、という結果になったんです。

マダム

あれっ?天の川銀河って4本腕でしたっけ?

坂井

いいツッコミですね。じつは確実にはわかっていないんです。光で見ても電波で見ても、つまり恒星でもガスでも明るいメインの腕は2本だと言われています。僕の研究では一応、ガスだと4本ある。電波でガスを見ると、もっと複数の腕があるのではないかと言われているんですが、それも含めてVERAで明らかにしたい。そのためには、VERAのデータだけでなく、恒星のデータを加える必要があるんです。

マダム

光で観測した恒星のデータが欲しいと。

坂井

はい。天の川銀河の円盤には、ガスよりも恒星の方がたくさんあるんです。だからここにたくさんモノがあって、さらにたくさんモノが引き寄せられるっていう渦巻き状の重力場を作っているメインとなるのは、ガスではなく、恒星です。

青は渦巻き状の重力場をあらわす
青は渦巻き状の重力場をあらわす
坂井

じつはこの青は渦巻き状の重力場を表していて、ここにたくさん恒星があるだろうというのが、僕の予想です。その重力場があったときに、ガスがどうやって分布するのか。僕はそれを調べたいんです。けっこうニッチな分野ですけど。