文科省との交渉は、どのようにしているのですか?
たとえば税金の使い道は、社会保障とか公共事業とか、必要なことが多々あるわけですよね。その中で「こんな研究できますから予算をください」なんて言っても通じない。どうして学術研究をするのか、それを明確に説明しないといけないわけです。
どんな説明をされるのか、教えてください。
私の場合は、100年後、200年後、1000年後に何を残しますか?という説明をします。今の日本人が未来に残せるもの、それは知識と教育しかないんですよね。
はい。
知識というのも、単に学問的な知識ではなくて、人間が生活していく上でのシステムも含めた知識です。民主主義だって最初からあったわけではない。社会のシステムとしてうまく機能するということを、人間の営みの上で、フランス革命を起こしたりして、努力して勝ち取ったものをみんなが享受している。今の人たちの暮らしは、そうした知識のもとに成り立っているわけですよね。我々はそういうものを作っていかないといけない。自然に対する理解だけでなく、いろんなことに対する理解に今の日本人が貢献していかないといけないんです。
そんな風に説明するんですけれど、なかなかね(苦笑)。でも、国の予算のある部分は必ずそこに貢献しなきゃいけないことを文科省もわかっている。そうやって説明して予算が降りると、今度はそれを「ちゃんと使いなさい」ということになる。
税金ですものね。
そう。ちゃんと使って研究成果をあげなきゃだめでしょう。というわけで、査定をするわけです。
VERAのメンバーであり、副台長・小林さんのやりがいはどんなところでしょうか。
日本の天文学コミュニティが人類のフロンティアとなるような最先端の研究をできる機関にしていく。それを、天文台全体を成り立たせながらやっていくということが、私の仕事です。やりがいを感じてやっています。
小林さんにとってVERAとは?
VERAは建設責任者として「つくった」という気持ちがあるので、自分の子供みたいな存在です。VERAとしての活躍にとどまらず、どんどん広がって東アジアや世界のなかで活躍してほしい。そのために、次のステップに行くんだ、ということを私は言い続けるわけです。子供と親みたいな関係ですよね。子供が成長するためには、いろんなことをやらなきゃいけないし失敗もする。それをあたたかく…ではなく、結構きびしく見ているという感じです。
小林さんならではのスケールの大きな期待感が伝わってきました。貴重なお話をありがとうございました。