実際にどんな天体をターゲットにしているかを見ていきますね。この図の左上から右下に斜めに伸びているのが天の川です。端から端までが、夜空でみると分度器の2度くらいの領域になります。
天の川銀河の中心部分ですね。
"A Wide-Field 90 Centimeter VLA Image of the Galactic Center Region"
LaRosa et al., 2000, Astronomical Journal, 119, 207-240
はい。たとえばこのSgr B2は研究者には有名な天体で、天の川銀河の中でもきわめてたくさん星が生まれているところです。SNRと書いてあるのは星が死ぬ時に爆発した残り物、つまり超新星残骸です。
Sgr A*とかSgr B2とかっていう天体の名前は、そういった現象が起きている領域、と思えばいいですか?
はい、そのようにとらえていただいて結構です。ちなみに左上の端っこにあるSgr Dっていう雪だるまみたいな形をしてるやつは、下のSgr D SNRが星が死んだ跡、上のSgr D HII(えいちツー)は星が生まれているところです。
えー!同じような形でくっついているのにまったく別モノなんだ。
そうなんです。それぞれ特徴がちがっておもしろいんですよ。僕が最初にVERAを使って銀河系中心の距離を測ったのが、このSgr D HIIです。星が生まれているところって、VERAがメインで観測している水メーザーが出やすい。それを利用して距離を測ってみたら、おどろきの結果が出ました!このSgr D領域は、銀河の中心にはなかった、っていうことがわかったんです。中心よりもずっと手前の地球に近い側にあったんですね。
あると思っていた場所になかった、それはビックリしますね。
そうなんです。1枚のこういう画像から想像するものとは全然ちがったものが、実際に観測をすると見えてくる。そういうところがいちばんおもしろい。位置天文(アストロメトリー)の楽しさだと僕は感じています。