コロナ対応によりアクリル板を挟んでのインタビューとなりますがご容赦ください。はじめに平野さんの肩書きである「技術員」の仕事について教えてください。
技術員は、国立天文台技術職員の職名のひとつで、天文学研究を支えるエンジニアです。プロジェクトによって担当する職務は様々ですが、私はアンテナの機能を支える重要な装置の保守をしています。VERAの受信機・水素メーザー・気象装置などの保守、改良、装置開発が主な仕事です。
安定運用のための大事な仕事ですね。それぞれの装置と保守の内容をくわしく教えてください。
では、受信機から説明しましょう。VERAの受信機は20mアンテナの上部機器室にあります。天体からの微弱な電波信号を受信機で増幅するのですが、その際に雑音を抑えるため、受信機は真空・極低温(-253℃くらい)にして容器に収めています。私は模擬の電気信号を使って受信機の動作を確認したり、トラブル発生時に計測器を担いで駆けつけ、どの部分が不具合なのかを調べて対応したりしています。
気象装置は、風向、風速、気圧、温度、湿度、降水の有無を知るための装置です。VERAの各局に設置されています。
へえ! 気象観測もするんですね。
はい。観測時の気象状況は非常に重要なので、気象庁と同じくらい高性能な装置を使っています。居ながらにして各局のリアルタイムの気象状況がわかります。メーカーによる点検を2年ごとに実施していますが、それでも壊れることはあるので、その場合はどこに異常があるのかを見つけて対応します。
あとひとつの「水素メーザー」とは何でしょうか?
水素メーザー原子時計です。VERAを含めた「VLBI観測」では観測局間の時刻比較が大変重要なため、非常に正確な時計が必要なんです。水素メーザー原子時計は1秒狂うのに1億年かかるほどの高い精度で時を刻みます。
なんと! 原子時計をお持ちでしたか。
記事公開日: 2020年10月30日