秋山和徳 (NRAOジャンスキーフェロー) が2019年度日本天文学会研究奨励賞を受賞

このたび、国立天文台水沢VLBI観測所の秋山和徳 (あきやま かずのり) 特別客員研究員が、2019年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。秋山氏は現在、米国マサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所において、アメリカ国立電波天文台 (NRAO) ジャンスキーフェローとして勤務しています。イベント・ホライズン・テレスコープ (EHT) による M87の超巨⼤ブラックホールシャドウの初撮影の実現に至るまでのこれまでの秋山氏の研究や貢献が高く評価され、研究奨励賞の受賞となりました。

日本天文学会研究奨励賞は1988年に日本天文学会員の寄付により創設され、35歳以下で過去5年間に優れた研究成果を挙げている35歳以下の若手天文学研究者に毎年最大3名まで授与されます。今年度は秋山氏を含め3名が受賞し、賞状とメダル、そして賞金が授与されます。

「このような栄誉を頂き、大変嬉しいです。今回の受賞は、ブラックホールの初撮影という天文学の大目標の実現に向け、EHTの素晴らしい同僚たちと国際チームで一丸となって努力した結果が実ったものだと考えています」と、今回の受賞について秋山氏は話しています。

秋山氏は2010年に東京大学・国立天文台水沢VLBI観測所の大学院生となり、後にイベント・ホライズン・テレスコープと名付けられる国際プロジェクトに当時唯一の邦人の学生として参加しました。そこで2010年代初頭の230 GHz帯のM87の試験観測成果を報告するなど、大学院生時代を通して現在のEHTを構築する礎となった初期の試験観測に大きな貢献を果たしました。これにより2015年に東京大学総長賞、東京大学大学院理学系研究科研究奨励賞を受賞しています。

秋山氏はマサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所において、2015年以降に日本学術振興会海外特別研究員、また2017年以降は邦人初のアメリカ国立天文台ジャンスキーフェローとしてブラックホールの初撮影に向けた研究を精力的に行ってきました。その中で、スパースモデリングをはじめとしたEHTの画像化手法の研究、およびそれを実装したSMILIと呼ばれる画像化ソフトウェアの開発を主導しました。後にSMILIはブラックホールの初撮影に使われた三つの手法の一つに採用されました。

秋山氏の大学院時代の指導教官である国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、「秋山さんはEHTプロジェクトにて、スパースモデリングの開発から画像解析チームのとりまとめ、さらには科学的議論に至るまで非常に大きな貢献をしました。その活躍が評価されて今回日本天文学会の研究奨励賞の受賞となったことは、秋山さんご自身はもちろんのこと、私も含めEHTチーム全体、さらには同じ分野で研究を目指す若手研究者にとっても大変喜ばしいことです」とコメントしています。

2017年に200名以上の科学者からなるEHTコラボレーションが設立されると、秋山氏はその画像化作業班を二人の世話人の一人として主導し、自ら開発したSMILIなどを用いてブラックホールの画像化を実現させました。また秋山氏はブラックホールの初撮影に関する六編の論文のうち、観測データから画像を復元しブラックホールシャドウの存在を示す⾮対称なリング構造が検出した四編目の論文の責任著者の一人として主導しました。EHTコラボレーションはこれらの成果により2020年基礎物理学ブレークスルー賞を受賞しています。

「初めてM87のブラックホール撮影に成功したことにより、謎に包まれたブラックホールの姿を実際に撮影し研究する新たなブラックホール天文学の時代が幕を上げました。今後数十年に渡って展開されるであろうEHTを用いたブラックホールの観測的研究に引き続き携わっていきたいと考えています」と秋山氏は話しています。

著 Nancy Wolfe Kotary

翻訳 Event Horizon Telescope Japan
写真のクレジット Nancy Wolfe Kotary/MIT Haystack Observatory

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