手法:波長1.3 mmのミリ波VLBI観測

今回、研究チームは2009年4月に波長1.3 mmというこれまでで最も短い波長でのM87の観測を行いました。観測に使用したのは米国のハワイ、アリゾナ、カリフォルニアの3か所にある電波望遠鏡群です(図2)。今回の観測ではこれら3局のデータを合成して巨大な電波望遠鏡を合成するVLBI(超長基線電波干渉計)という技術を用いています。

 VLBIは、現存するありとあらゆる望遠鏡の中で最も高い分解能を達成できます。なぜなら、望遠鏡の分解能は(波長÷望遠鏡口径)で決まるので、VLBIの場合、望遠鏡口径を地球規模にまで拡大することで、結果として非常に高い分解能が達成されるのです(分解能の値が小さいほどより細かいものが見えることになります)。

 今回M87を1.3 mmという短い波長の電波で観測した理由は2つあります。1つ目は、上で述べたように波長を短くすることでVLBIの分解能を極限まで高めることができることです。さらに、2つ目は、波長の短い電波で観測するとジェットの透明度が増すので、よりブラックホールに近いジェットの根元が見えることです(図3)。しかし、これまではこのような短い波長での観測は技術的に難しかったため、同様の観測を行うことはできませんでした。

図2:今回用いた観測網の配置図。米国の3局からなるミリ波・サブミリ波望遠鏡を使用して、VLBI(超長基線電波干渉計)観測を行った。

図3:波長ごとに電波ジェットの明るい場所が変化する様子を表すイメージ図。左側が長い波長、右側が短い波長に相当し、波長が短い電波で観測すると透明度が上がるためにブラックホールにより近い所が見える。今回の波長1.3 mmでのVLBI観測は、M87の観測としては波長が一番短いもので、ブラックホールの極く近くの放射を捉えている。

 

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