成果:ブラックホール付近のジェットの根元を検出

 今回の観測では波長1.3 mmの電波でM87のジェットを検出することに初めて成功しました。そのデータの解析からは、ジェットの根元の大きさがブラックホール半径の5.5倍であることが突き止められました。過去の観測の結果から、波長1.3 mmのジェットの放射はブラックホールからの距離が半径の2~4倍程度という非常に近い領域から出ていることが示されています。このことから今回の観測はブラックホールに極めて近い領域でその半径の数倍の構造を初めて捉えたことになります。

もしブラックホールが回転していない場合(シュバルツシルト・ブラッホールの場合)、ジェットの根元の見かけの大きさはブラックホール半径の7倍程度になると期待されています。一方、回転しているブラックホール(カー・ブラックホール)の場合、それよりも小さい値も取り得ることが知られています。今回得られたジェットの根元の大きさはブラックホール半径の5.5倍ですので、この結果はM87のブラックホールが、回転しているカー・ブラックホールであることも示しています。さらに、今回測定された波長1.3 mmでのジェットの大きさは、より長い波長でみたジェットの大きさと電磁流体力学の理論シミュレーションから予想される大きさともよく合っています(図4参照)。 

図4:ブラックホールからの距離とジェットの大きさ(幅)の関係図。今回の観測結果は水色で示されている。赤線は回転していないブラックホール(シュバルツシルト・ブラックホール)の最内安定円軌道の見かけの大きさを表し、回転なしのブラックホール周囲のジェットの根元の大きさに相当する。

 

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