EHT (Event Horizon Telescope)

ミリ波サブミリ波のVLBIの手法を用いてブラックホールの直接撮像を目指す国際プロジェクト。米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)を中心に、日本の国立天文台も含めて10以上の研究機関が参加している。現在のEHTの観測局は米国の3局が中心だが、将来的には日米欧がチリに建設中のALMAや、その他の望遠鏡も観測に参加することを検討している。なお、”Event Horizon”は「事象の地平線」のことで、ブラックホールが光さえも脱出できず周辺領域と因果関係をもたない「事象の地平線」で囲まれていることに起因する名前である。

ブラックホール半径

ブラックホールの質量Mが与えられると、その半径Rは

R=2GM / c2

という簡単な式で与えられる。この半径はシュバルツシルト半径とも呼ばれる。太陽質量のブラックホールの場合はその半径は3 kmである。

マイクロ秒角

角度の単位で、1秒角の100万分の1に相当。1秒角は1度の3600分の1である。今回達成した分解能である60マイクロ秒角は、6000万分の1度に相当。人間の視力に直すと、視力約100万に相当する。

VLBI(Very Long Baseline Interferometer:超長基線電波干渉計)

数百kmから数千km離れた望遠鏡同士を電波干渉計として合成し、極めて高い分解能を得る観測技術。電波や光、X線なども含めたありとあらゆる波長帯の望遠鏡の中で、最も高い分解能を達成している。

シュバツルシルト・ブラックホールとカー・ブラックホール

ブラックホールの性質を決定するパラメーターは質量と回転(角運動量)と電荷である。このうち電荷は+と-で相殺されて0になると期待されるので、基本的には質量と回転の2つが重要なパラメーターである。回転していないブラックホールがシュバルツシルト・ブラックホールで、回転しているのがカー・ブラックホールと呼ばれる。回転しているブラックホールからはその回転エネルギーを取り出せることが知られている。

最内安定円軌道

ブラックホール周囲で質点が回転運動する場合、ブラックホールから離れている場所では安定に円軌道上を運動できるが、ある半径よりもブラックホールに近づくと軌道が不安定になり、円運動ができなくなってしまう(この場合質点はブラックホールに急速に落ち込む)。この境界を与える半径が最内安定円軌道で、ブラックホール周囲のガス円盤もこの半径より内側で途切れている。今回観測したジェットの根元の大きさもこの半径と密接に関連していると考えられる。

 

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