ブラックホールは非常に質量の大きな、しかし非常にコンパクトな天体であり、その強力な重力によって光すらも抜け出せない天体であるということはよく知られています。ブラックホールはこの宇宙に数多く存在しており、銀河の中心には特に巨大なブラックホール(超巨大ブラックホール)が存在すると考えられています。超巨大ブラックホールもその強大な重力で多くのものを引きつけますが、落下してくる物質のエネルギーの一部を電磁波に変えることで、ブラックホールの周囲からは非常に強い電磁波が放射されます。また落下してくる物質の一部はブラックホールの両極方向に猛烈な勢いで放出され、何千光年もの距離までのびる「ジェット」として観測されます。こうした活発な活動を見せることから、銀河の中心にある超巨大ブラックホールは落下する物質を燃料として膨大なエネルギーを生み出す「宇宙のエンジン」と呼ぶことができます。そして、この「エンジン」の駆動に大きく影響するのが、超巨大ブラックホール周囲の磁場であると考えられてきました。しかし超巨大ブラックホールは非常にコンパクトであることに加えて遠方にあるため、その周囲の様子を詳しく観測することは難しく、これまでブラックホール近傍の磁場構造は明らかになっていませんでした。

 
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