観測とデータ処理

2017年4月5日・6日・10日・11日に、M87 中心核の観測が行われました。各観測局でハードディスクに記録されたデータは、米国マサチューセッツ州のMIT ヘイスタック観測所とドイツ・ボンのマックスプランク電波天文学研究所へ輸送され、そこで観測データの結合 (相関処理) が行われました。その後、データはインターネットを経由して、データキャリブレーションを担当するメンバーに送られて、3通りの異なる手法を使って慎重に大気の影響などが補正されました。較正済みのデータを解析して画像を復元する際にも、3つの異なる画像復元手法を使うことで、結果の確からしさを確認しました。また、各観測日の画像を比べることで、いずれでも同じような画像が得られることも確認しています。

EHT で各日に観測されたデータを、DIFMAP (従来法)・eht-im (米国提案法)・SMILI (日本提案法) で復元した画像。(画像クレジット:EHT Collaboration)
M87 を様々なスケールで観測した画像。ハッブル宇宙望遠鏡、東アジアVLBI観測網 (EAVN)、EHT で観測すると、数千光年から0.01光年のスケールまで、5桁以上ものスケールで天体の姿を捉えることができる。(画像クレジット : NASA, ESA and the Hubble Heritage Team)STScI/AURA)(左上), EAVN Collaboration(右上), EHT Collaboration(下))

ブラックホールシャドウの画像からわかる、その姿とは?

M87中心核の画像からリング状の構造が検出されました。リングと中心の暗い部分のコントラスト比が 10対1 以上になり、中心部が有意に暗いことが確認されています。リングの直径はおよそ42マイクロ秒角であることから、ブラックホールの質量が太陽の65億倍であることがわかりました。これまでの研究では、M87ブラックホールの質量が太陽の35億倍か62億倍かと議論されていましたが、本研究により、誤差を考慮した上で重い方の質量と一致すると決定づけられました。また、理論・シミュレーションとの比較から、リングの非対称性も含めて、ブラックホール近傍のガスが電波を放射しているという描像と合致しました。以上のような慎重な検討を重ねた上で、これがブラックホールシャドウを初めて捉えたものと結論づけました。

2017年4月6日にEHTで観測された画像 (左) 、シミュレーション計算から得られた画像(中央)、シミュレーション計算から得られた画像を実際の観測画像と同じ条件でぼかした画像 (右)。(画像クレジット:EHT Collaboration)