2013年8月7日から9日に、国立天文台VERA石垣局と石垣島天文台における高校生対象の観測研究体験イベント「美ら星研究体験隊」、通称「美ら研(ちゅらけん)」が開催されました(国立天文台水沢VLBI観測所・沖縄県立石垣青少年の家・八重山地区県立高等学校長連絡協議会・NPO八重山星の会による実行委員会主催、日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」との共催)。今回の美ら研では、2つのチームがそれぞれ、はくちょう座方向にある生まれたばかりの星、およびおおぐま座方向にある年老いた星で、過去に報告例のない電波星(メーザー天体)を新たに発見しました。今回の発見は、2005年に美ら研が始まって以来4回目(2005年、2008年、2010年、2013年)、天体数としては5つ目となりました。また、可視光観測を行ったむりかぶし望遠鏡でも、新小惑星の発見が相次ぎました。
美ら研は2005年から毎年夏休みに地元高校生向けの観測研究体験を行う企画であり、今年度は8回目(2007年のみ中止)となりました。全国の高校生を対象に参加者を募集し、地元の八重山高校から11名、八重山商工高校から5名、沖縄県外では初の福島東稜高校(福島県)から5名、計21名の参加者を迎え入れました。参加者はVERAで電波観測を行う3班、石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡で可視光観測を行う1班に分かれて、2泊3日の日程で石垣青少年の家に宿泊しながら深夜におよぶ観測研究を行いました。
電波観測のグループは3班それぞれ異なるテーマで、水分子から放射されるメーザー(レーザーのように増幅された強い電波)を伴う天体の探査を行いました。今年度は3つの班ともにメーザーの兆候を示す信号が多数検出されました。このうち、重い星(大質量星)が生まれつつある星間分子雲(大質量星形成領域)の探査を行ったVERA2班、年老いた星(ミラ型星)の探査を行ったVERA3班で過去の文献で報告例のない新しい水メーザー天体が発見されました。これらの新天体は、今後VERAによる銀河系3次元立体地図作成のプロジェクトや星形成、恒星進化の研究にも活用されるものとして、意義があります。
VERA2班が水メーザーを発見した天体は、はくちょう座領域の星間分子雲「北の石炭袋」にある若い星IRAS20352+4124(IRASという赤外線観測衛星で検出された星)で、太陽系から5500光年の距離にあります(Motte et al. 2007)。美ら研では、弱いメーザーを検出しましたが、その後の水沢VLBI観測所での追観測で位置も同定され、新検出であることが確認されました。
VERA2班の発見したIRAS20352+4124の水メーザーのスペクトルと位置。上は美ら研での観測、下はその後の追観測の結果を示しています。同じ周波数に2本の強い信号が確認されています。
VERA3班が水メーザーを発見した天体は、RU UMa(おおぐま座RU星)と呼ばれる、252日の周期で明るさが変動するミラ型星で、太陽系から5500光年の距離にあります(Jura & Kleinmann 1992)。一酸化珪素(SiO)分子からのメーザーはすでに発見されています(Deguchi et al. 2007)が、水メーザーの検出は初めての報告となります。
VERA3班の発見したRU UMaの水メーザーのスペクトルと位置。
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