令和5年度国立天文台長賞受賞

2024年2月6日、VLBI黎明期における基礎技術の開発、研究拠点の構築およびVERA計画実現への貢献が評価され、笹尾哲夫(ささおてつお)元国立天文台教授(元地球回転研究系主幹*1)、面高俊宏(おもだかとしひろ)鹿児島大学名誉教授、川口則幸(かわぐちのりゆき)国立天文台名誉教授(元水沢VLBI観測所所長)の3名が国立天文台長賞を受賞しました。台長賞とは、研究、教育、技術または事務の各部門において、国立天文台に対して特に顕著な功績があると認められる者、またはグループに対して、推薦に基づく選考を経て贈られるものです。


笹尾元国立天文台教授は、10μ秒角の位置決定精度を達成するため、天体の位置を精密に測定する相対VLBI観測を提唱し、VERA計画の立案および実現に大きく貢献しました。笹尾さんは表彰式のスピーチで、「水沢のグループを代表して評価を受けるという意味でお受けした。VERAは鹿児島大学をはじめとする大学や通信総合研究所(当時)などの研究機関、また開発に協力いただいた各メーカーの技術陣の方々など、多くの人の協力で実現した。そして天の川銀河のほぼ全ての領域で距離と運動を実測するという新たな時代を切り開くことができ、また測地観測や共同利用機関として国内外の研究者に活用され、さらに国内VLBI観測網、東アジアVLBI観測網で中心的な役割を果たすことができた。これも国立天文台、関係機関、また各地域の皆様など多くの方の強力なご支援により建設できたものと思い、全ての皆様のご支援ご努力に感謝いたします。」と述べられました。


面高俊宏鹿児島大学名誉教授は、VERA計画の立案および実現に尽力し、鹿児島大学を国内有数の天文学研究拠点に発展させ、人材の育成と天文学コミュニティの拡大に大きく貢献しました。面高名誉教授はスピーチで、「笹尾さんや鹿児島の森本さんと言い出した天の川銀河の精密立体地図作りの計画を、なんとか実現できないかと、いろいろ頑張った。鹿児島をはじめ広く国民の皆様に知っていただき、理解を得てご支援いただけるよう幅広く活動した。その中から鹿児島大学の理学部物理学科に宇宙コースを認めてもらい、教員も増員していただきました。道程半ばで、なかなか思うように進まず、もうダメかと思う時もあったが、地元の方が力を貸してくれたりと、多くの方に支えていただきました。今後も、多くの人が一体となって一生懸命頑張れば、いい計画をどんどん世界に先駆けてやれるように絶対なると、私は信じています。」と述べられました。


川口国立天文台名誉教授は、2つの天体を同時に観測できる2ビーム望遠鏡を開発し、VERA計画の実現および東アジアVLBI観測網の構築に大きく貢献しました。川口さんはスピーチで、「はじめは反対意見も多かった2ビーム方式ですが、笹尾さんや面高さんがこれでいけるんじゃないかと言ってくれて、また当時の台長の海部さんが、「川口、それでいける!それでいこう!」って言ってくれて、皆さんからの心強い力添え、そんな言葉に支えられてやってきました。開発については10μ秒角の達成が難しくて、天候などの影響で到達するのは非常に厳しいものと分かりました。ただ現在の2ビームを本来目指していた4ビームにできれば、今らでも絶対できると思ってます。星の位置を正確に決めるのは天文学にとってとても大切なこと。もし今からでも4ビームをやらせていただければ、死ぬまでに絶対達成したいと思います。」と述べられました。


今回の3名の受賞に接し、本間所長は次のように述べています。
「この度、VERAプロジェクトの実現に尽力された三名の先輩方が国立天文台台長賞を受賞されましたこと、心よりお祝い申し上げます。VERAのような計画の実現には十年を超える検討が必要であり、そのような黎明期に活躍された先輩方のお力なしには、今日のVLBI研究の発展はありえませんでした。この機会に改めてすべての諸先輩方のご努力に感謝するとともに、現在の研究を次の世代にしっかりと継承すべく我々も決意を新たにした次第です。」



*1 国立天文台への改組に伴い、主に地球回転研究系と水沢観測センターが併設され、地球回転研究系主幹が全体の所長の役割を担った。

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