第15回目の意中の人は
小林秀行さん

国際協力と競争

マダム

先ほど競争という言葉が出ましたが、協力関係の中でどのような競争をしているのですか。

小林

競争というのはプロジェクトではなく、個々の研究者の競争です。望遠鏡をつくったりネットワークを組むのはコラボレーション。観測する時もお互いに信頼して役割を果たす。けれども個々の研究テーマは熾烈な競争をしていかないといい研究成果が生まれない。科学とはそういうものだと理解して、その切り替えをうまくやる必要がありますね。

アルマとのつながり

マダム

アルマとVERAの学問的な交流はありますか?

小林

アルマは惑星系ができるところや、ガスの状態のいろんな形を細かく観測することができる。VERAとかVLBIは、ガスのちっちゃい塊の位置だとか、変化する様子をすごく精密に測ることができる。VERAで研究成果を出して、それを元にアルマで観測するとか、アルマで観測した成果を元にVERAを使って研究したりとか、そうした学問上の交流はあります。

マダム

交流の成果が出た例はあるんでしょうか?

小林

あります。ある天体についてVERAで発見した運動を、さらにアルマで深く研究したら、星形成の分野で50年来の大問題となっている謎に迫れるような構造の発見につながったんです。これは、廣田朋也さんの研究なんですが、面白いのでぜひ本人にインタビューしてみてください。

マダム

はい、ぜひ詳しくお聞きしたいです。廣田さんのケースは、VERAで観測した自前のデータを持っていて、それを元にアルマにプロポーザル(観測提案)を出し、アルマの観測時間を獲得した。それによって、VERAの観測で着目した部分をアルマでもっと細かく見ることができた、ということですね。

小林

学問的にはそうだね。そういう連携はこれからどんどん広まっていくと思いますね。

小林 秀行
氏名
小林 秀行 こばやし ひでゆき
出身地
東京都生まれ
紹介

千葉県育ち。野辺山ミリ波電波干渉計で学位を取得後、スペースVLBI計画のVSOPでは、衛星のシステム、観測システム、地上相関器システムの開発を進めた。VERAでは、プロジェクトマネージャとして、建設・性能出し・運用システム構築を進めた。またVERA、日本国内VLBI網の発展として東アジアVLBI網の構築を進めている。2010年から国立天文台財務担当副台長。