国際協力におけるマネージメント

国際協力におけるマネージメント

マダム

国際協力におけるマネージメントについても教えてください。

小林

国際協力プロジェクトの代表はアルマとTMTですが、VLBIにも私が仕掛けていった国際協力プロジェクトがあります。韓国と中国、最近はタイも加えて、東アジアにおけるVLBI観測網の組織化を推進しています。

小林

組織化といってもね、最初は何にもないわけ。そもそも韓国だって最初は14mの電波望遠鏡1台しかなかった。そこに行って「VLBIをやりましょう、新しく望遠鏡を作って日本の望遠鏡と結合すると、こんな新しい研究ができますよ」と言って口説くんです。それで韓国は3台の電波望遠鏡を作りました。

マダム

すごい。

小林

そちらを進めながら中国にも声をかけたんです。中国はすでにヨーロッパと組んでVLBIをやっていたけれど、そこへ「日本とも一緒にやりましょうよ」という話を持っていったんですね。

VERAと東アジアの連携はなぜ重要か

マダム

中国にとって東アジアとの連携はどんなメリットがあるんですか?

小林

VLBIでは、望遠鏡どうしを遠く離すほど倍率が上がりますが、観測画像の品質は悪くなります。画像の品質を決めるのは、望遠鏡の数の多さ=密度なんです。日本にはVLBIに使える電波望遠鏡が13台ある。そこへ韓国の4台が加わり、さらに中国が入るとより密度が高くなって非常にクオリティの高い観測ができる。そこがメリットです。

マダム

なるほど。

小林

中国とヨーロッパと組んでいる観測は、距離が離れているから倍率は上がるけれども、中国とヨーロッパの間がスカスカなので、クオリティの高い観測にならない。そこで「私たちと組めばいい観測ができるよ」と言って、こっちを向かせたわけです。

マダム

そこへ、さらにタイが加わるのですね。

小林

そう。タイもいま天文学を一生懸命やろうとしています。でも、小さな電波望遠鏡を1台作っただけでは研究の競争力がない。だから、地の利を生かして周りの国と一緒にやれば、世界的な研究性能を出せる望遠鏡のひとつになれますよ、と現地へ3~4回行って口説き落として、予算を獲得してもらったところです。

マダム

タイの予算でタイに望遠鏡ができることは、日本にとってもメリットがありますよね。

小林

観測ネットワークがさらに南に広がることで、大きなメリットがあります。私がやっているのは、まあ要するに「営業」だね(笑)。

マダム

営業して繋がっていくのはVLBIの素敵なところですよね。

小林

そうだね。 本当に、ものすごく仲間になれるんですよ。もちろん研究だから競争しなきゃいけないけれど、望遠鏡をつくったりネットワークを組んでいく時は、同じ研究目的を持って一緒に夢を見ていくわけだから、そこが楽しいところだよね。