あと、機械計測という重要な仕事がありまして、アンテナが地面に対して正しくまっすぐ建っているか、回転する部分の軸がどのくらい傾いているかなどを、VERA4局をまわって毎年測っています。
前回、田村さんにお話いただいた、地球の表面に対してアンテナがどれくらい動いたかを見る測定とはちがうんですね。
はい。私はもっと局所的な部分を見ます。建っている箇所の傾き、レールのでこぼこ、構造物としての動きを精密に見ています。たとえば、アンテナが乗っている丸いレールを精密に測ると0.05ミリの精度ででこぼこ具合が見えるので、それによってアンテナが傾いていないか、動かすときにガタガタしていないか調べます。
開発の仕事もなさっていましたよね。
はい、フィドーム膜の開発をしました。アンテナのお皿の中心にある丸い部分に張ってある膜です。1枚張っただけだと風でバタバタ動いて中の機材に接触してしまうので、太鼓のように筒の両端に膜を2枚張って、さらに中に空気をいれて膨らませているんですよ。
へえ!
VERAは2つの天体の電波を受けるために受信機を2台離して置いているから、電波が入ってくる口が3mと大きいんです。口が小さければ色々と方法もあるのですが、3mもあって、さらに電波が通過するときのロスも抑えないといけない。そのため、特殊な膜材を開発する必要があって、それを任されたんです。
機械と膜って、まるっきり畑違いじゃないですか。
はなはだ畑違いです(笑)。膜材の会社と協力して開発を始めたんですけれど、機械とは全くノウハウがちがう。ほとんど膜材メーカーさんに教えてもらうんですけれど、でも膜をアンテナに取り付けるのはボルトや機械部品なんですよね。
うんうん。
そういった機械部品に関しては、可能な限りこちらからノウハウや部品を提供させて頂いて相互協力ですね。私の方でちょこちょこ部品を設計・製作し「こういうのじゃダメかな?」って何度も持って行って、もうホントに協力のたまもので完成しましたね。
やっぱり協力!
うん。大きなアンテナなので、一から十まで一人でやるっていうわけにはいかない。本当に周りの人たちの協力あってこそです。