今回の結果は、ブラックホールの極近傍領域で初めて偏光を検出し、ブラックホール周囲の磁場構造を明らかにしたことが最も重要です。ブラックホールの周囲では、降着円盤からのガス流入やジェット生成などの活動的な現象が「ブラックホールエンジン」として働くと考えられており、これまでの理論モデルでは、そのいずれにも磁場が重要な役割を果たしているとされてきました。

今回の観測によってブラックホールの周辺では磁力線が複雑に絡まりながら、短い時間の中で躍動的に変動している様子が初めてとらえられました。これはこれまでの理論モデルの枠組みを観測的に裏付けるものです。観測によって明らかになった磁場の複雑な構造やその時間変動は、今後ブラックホール極近傍領域の物理をさらに詳しく調べる上でも貴重な情報になると期待されます。

 

図1(再掲). いて座Aスターのブラックホール極近傍領域の想像図。今回の観測で観測された磁場構造(磁力線)も線で示してある。今回の観測から、ブラックホール極近傍で磁場が存在すること、そして磁力線が複雑に絡まった構造を示すことが示された。
(Credit: Harvard Smithsonian Center for Astrophysics / M. Weiss)

 

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