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2020年度(第3回)日本天文遺産 認定

更新日

2021年(令和3年)3月、国立天文台水沢VLBI観測所の臨時緯度観測所眼視天頂儀及び関連建築物が2020年度(第3回)日本天文遺産に認定されました。

日本天文学会では、歴史的に貴重な天文学・暦学関連の遺産を大切に保存し、文化的遺産として次世代に伝え、その普及と活用を図ることをひとつの使命と考え、日本における天文学(以下、暦学も含む)的な視点で歴史的意義のある史跡・事物に対して日本天文遺産の認定を行っています。(日本天文遺産HPより抜粋)

1.名称:臨時緯度観測所眼視天頂儀及び関連建築物

具体的な内容

  1. 眼視天頂儀1号機 (ドイツ・ヴァンシャフ社製で、木村榮記念館内で展示中)
  2. 眼視天頂儀室 (2017(平成29)年 国登録有形文化財(建造物)登録番号:03-0100号)
  3. 眼視天頂儀目標台及び覆屋 (2017(平成29)年 国登録有形文化財(建造物)登録番号:03-0101号)

2.カテゴリー:史跡・建造物、物品

今回、臨時緯度観測所眼視天頂儀及び関連建築物が日本天文遺産に認定されたことは、大変意義深いことです。これらの観測機器と建築物は、日本の近代天文学の黎明期にここ国立天文台水沢VLBI観測所の前身である臨時緯度観測所で始まった地球の極運動の観測的研究に実際使われ、木村榮初代所長が緯度変化に関するZ項(木村項)の発見(1902年(明治35年))に繋がりました。これらの天文学的な視点での歴史的意義が日本天文学会から認められたことになります。木村をはじめとする職員は、1899年(明治32年)12月より1927年(昭和2年)までこの眼視天頂儀1号機および関連建築物を使って毎夜天頂付近を通過する星の位置を精確に測定しました。眼視天頂儀を使った観測は、現在残っている眼視天頂儀室で行われました。観測時には眼視天頂儀目標台の光を基準にして測定精度を確保していました。これらの一連の装置と建物が観測開始以降120年以上に渡って保管され、ほぼ当時の状況を保っているので、当時の観測の様子をたどることができます。

木村の発見したZ項を含んだ極位置の計算式が万国緯度観測事業(ILS, International Latitude Service)において採用されることになり、極運動の観測精度が大きく向上する事になりました。これにより、極運動の起源解明に向けた研究が進みます。更にZ項の起源自体も発見から68年後に遂に解明されます。また木村は、Z項発見の功績により、第1回学士院恩賜賞(1911年(明治44年))、英国王立学会ゴールドメダル(1936年(昭和11年))、第1回文化勲章(1937年(昭和12年))といった、輝かしい各賞を受賞しています。

 

参考文献

日本天文遺産HP:
https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/heritage/
https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/heritage/recipients/

Z項の発見論文:
1) Kimura, H. 1902, AN, 158, 233
2) Kimura, H. 1902, AJ, 22, 107
 

写真1 眼視天頂儀1号機(木村榮記念館内で展示)
写真1 眼視天頂儀1号機(木村榮記念館内で展示)
写真2 眼視天頂儀室 左遠方に、目標台及び覆屋が見える。
​​​​​写真2 眼視天頂儀室 左遠方に、目標台及び覆屋が見える。
写真3 眼視天頂儀目標台及び覆屋
写真3 眼視天頂儀目標台及び覆屋
写真4 楯
写真4 楯

 

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