
臨時緯度観測所本館(木村榮記念館)が2024年度(第7回)日本天文遺産に認定
この度、日本天文学会が認定する2024年度(第7回)日本天文遺産に、臨時緯度観測所本館(木村榮記念館)が選ばれました。
日本天文遺産は、「歴史的に貴重な天文学・暦学関連の遺産を大切に保存し,文化的遺産として次世代に伝え,
その普及と活用を図ることをひとつの使命と考え,日本における天文学(以下,暦学も含む)的な視点で歴史的意義のある
史跡・事物に対して」日本天文学会が認定するものです(一部、日本天文学会 日本天文遺産 推薦要領より引用)。
明治32年(1899年)に国立天文台水沢VLBI観測所の前身として設置された観測所が臨時緯度観測所です。
水沢を含む世界6か所に同様な観測所を設置し国際共同観測が始まりました。これは国際緯度観測事業と呼ばれ地球の
回転のふらつきを世界各地から観測しその結果を世界に公表する事業でした。この国際事業に参加を決めた日本の明治政府は
岩手県奥州市水沢に観測室(眼視天頂儀室、第3回日本天文遺産)を明治32年(1899年)に建設すると、翌年の明治33年
(1900年)に所長室や事務室を備えた本館を建設しました。それから約70年間、地球回転の研究施設の一つとしてこの建物は
使われ続けました。
昭和41年(1966年)に三代目の本館(現在の水沢VLBI観測所本館)が建設されると初代所長 木村榮(ひさし)の業績を
顕彰するため木村榮記念館として改修され今日に至ります。木村榮記念館には明治から昭和初期まで使われていた眼視天頂儀
(第3回日本天文遺産)など当時の望遠鏡や計測機器、観測ノートなどが展示されています。
この初代本館となる臨時緯度観測所本館(現在の木村榮記念館)が第7回日本天文遺産に認定され、日本天文学会2025年
春季年会の授賞式において本間所長に贈呈されました。
本間所長は今回の認定に
「このたび臨時緯度観測所本館(木村榮記念館)が天文遺産に認定され、心より嬉しく思います。この建物は国立天文台水沢地区の
最初の庁舎として120年強の歴史があり、木村榮初代所長がZ項を発見した当時の姿を現代に伝える科学史的に貴重な建物です。
今回日本天文学会にその価値を認められたことで、今後も多くの方々に水沢の観測所へ足を運んでいただき、明治時代から
現代まで水沢の地で続く天文学研究について知っていただく機会となることを願っております。」
とコメントしています。
第3回日本天文遺産に登録された施設や望遠鏡と合わせて(臨時)緯度観測所初期の文化遺産が全て天文遺産に登録されました。
明治維新からわずか31年後、欧米の科学力に追いつくために世界と対等に議論を交わしていた木村榮をはじめとする日本の
科学者達が活躍していた当時の様子をこれらの天文遺産から感じることができます。同じ敷地内にある二代目の本館
(現在の奥州宇宙遊学館)と合わせて見学に来て下さい。
日本天文遺産 認定一覧(日本天文学会webサイトより)
https://www.asj.or.jp/jp/activities/designation/heritage/recipients/