4. 意義:より多くのダークマターが存在

一般に銀河の回転速度は、銀河の重力との釣り合いで決まります。そのため、銀河の回転を測ることは銀河の質量を測ることになります。今回の得られた最新の銀河回転速度(Θ0=240 km/s)を用いて太陽系よりも内側の天の川銀河の質量を求めると、これまでの値を用いた場合に比べて約20%も増加することになります。すなわち、この領域にあるダークマターの量がこれまで推定されていたよりも多くなることを意味しているのです。

現在ダークマターはミクロな素粒子であるとする説が主流です。実際、地球に降り注ぐダークマター粒子を直接捉えようとするダークマター検出実験が素粒子実験物理学者たちによって進められています。今回の我々の結果は、地球に降り注ぐダークマター粒子の数と速さにも修正を迫るもので、素粒子物理学実験にもインパクトを与えるものです。
 

今回の成果は、VERAが進めている天の川銀河スケールでの精密測量が天の川銀河の構造決定に強力であることを改めて示すものです。VERAの建設完了から10年目、VERAの初期成果から5年目の節目にあたる2012年に達成した記念碑的な成果でもあります。今後はさらにVERAの観測を続けて、今後10年程度で天体数を数100個程度まで増やす計画です。そして、より高い精度で天の川銀河の基本構造を決定できると期待しています。
 

VERAに加えてVLBAやEVNの観測、さらには2013年打ち上げ予定のGAIA衛星などの観測結果も合わせると、今後10年で天の川銀河の理解が飛躍的に進むでしょう。
 


 

5. 研究チームの構成 へ  

 

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