
岩田 悠平(いわた ゆうへい) 助教が、2025年度国立天文台若手研究者奨励賞を受賞しました。
国立天文台若手研究者奨励賞は、優れた研究業績を上げた国立天文台の若手研究者が将来国立天文台や国内外で研究リーダーとして活躍することを期待し、若手研究者の研究を奨励することを目的として2018年度より創設しました。
今回、受賞した研究テーマは、「銀河系中心巨大ブラックホールの形成過程と活動性」(研究テーマ1)ならびに「日本・韓国VLBI観測網を用いた近傍超新星爆発の電波フォローアップ観測」(研究テーマ2)です。
「銀河系中心巨大ブラックホールの形成過程と活動性」(研究テーマ1)では、天の川銀河の中心に存在する超大質量ブラックホール誕生の可能性へと導く観測的結果を示しました。超大質量ブラックホールは、中質量ブラックホールの合体によって形成されたというシナリオが提案されています。このシナリオに必要な中質量ブラックホールを内包している可能性がある、天の川銀河中心の分子雲について、これを否定し得る他の分子雲との相互作用の仮説を、国立天文台水沢VLBI観測所が運用するVERAを用いた年周視差の観測から空間的に離れているものとして排除し、さらにALMAによる追観測から中質量ブラックホールの可能性があるミリ波点状電波源をその内部に発見しました。別の候補天体では、これまでに知られていない非常に小さくかつ内部の高速な運動を確認し、その運動から中質量ブラックホールが内包されている可能性を示唆しました。以上より多くの候補天体を詳細に調べることで、天の川銀河の超大質量ブラックホールが、中質量ブラックホールの合体による形成シナリオに沿って進むものとして観測的な裏付けを持った道筋を描き出しました。
さらにブラックホールから噴き出すジェットが見られないなど活動性が低いとされる天の川銀河中心の超大質量ブラックホールについて、活動性の一端を示す結果を得ました。天の川中心の超大質量ブラックホールにおいて、最内安定円軌道付近での既知の熱いガスの塊(ホットスポット)が、高い精度でのデータ処理を施すことで、フレアと呼ばれる明るさが突出した瞬間だけでなく、定常的に存在する可能性を示唆しました。これによりEHTなどさらなる超高分解能な観測と合わせることで、ホットスポットが単に周回するだけでなく、ブラックホールへ近づき落ちてゆく様子が捉えられる可能性を示したものとなります。

「日本・韓国VLBI観測網を用いた近傍超新星爆発の電波フォローアップ観測」(研究テーマ2)では、実際に起こった超新星爆発において、VLBI観測網による電波観測の結果と理論モデルとの比較から、爆発の数十年前から質量放出が活発化していたことを解き明かしました。大質量の恒星がその一生の最後に見せる超新星爆発について、爆発前の段階で恒星を形作る物質を宇宙に噴き出す質量放出があることが知られています。爆発前に放出した物質に、爆発により飛び散った物質が追いつき衝突することでシンクロトロン放射による電波が生じ、その観測から物質の濃淡が分かり、どのように質量を失い爆発に至ったのかという大質量星の進化の歴史をたどることができます。VERAや日本VLBI観測網(JVN)、また韓国VLBI観測網(KVN)を使用して、2023年5月19日(世界時間)に発見された超新星 SN 2023ixf の爆発後、数か月に渡る明るさの変化を観測し、理論モデルとの比較から超新星爆発前の質量放出率が爆発の28年前から約6年前にかけて徐々に増加していたことを示しました。また同時にこの研究成果からは、EHTに代表される国際的な大規模VLBI観測網ばかりではなく、国内規模の小規模なVLBI観測網が持つ迅速・高頻度かつ長期にわたる観測機会がもたらす有用性を示すこととなりました。

今回の受賞に際し水沢VLBI観測所の岩田 悠平 助教は、「このたび、国立天文台若手研究者奨励賞を受賞することができ、大変光栄です。本研究成果は、これまで所属してきた機関において、多くの方々とのご縁とご支援に恵まれた結果として得られたものです。今後も人とのご縁を大切にしながら、さらなる研究成果を創出できるよう、一層精進していきたいと思います。」と述べています。なお授賞式は、1月6日に国立天文台三鷹キャンパスにおいて行われました。
関連リンク
- ・研究テーマ1の成果
- 「天の川銀河中心の超巨大ブラックホール「いて座A*」の「瞬き」を検出 ―ブラックホールごく近傍からの放射か―」
- 「ALMA Spots Twinkling Heart of Milky Way」
- ・研究テーマ2の成果
- 「超新星からの電波放射を日本・韓国の望遠鏡で観測」
- 「Radio Emission from a Supernova Observed with Japanese and Korean Telescopes」
- ・新年台長挨拶
- 2026年を迎えて—国立天文台長 土居守
- A new-year’s message from the Director General, NAOJ