水沢観測センターでの火星観望会

 

 この夏は岩手ではついに梅雨が明けず、7月、8月とずっと悪天候が続いてい
ました。しかし火星の大接近が近づくと共に、市民から水沢観測センターで観
望会があるかどうかの問い合わせも多数ありました。そのため、水沢の地でも
観望会を行う必要性をひしひしと感じました。そこで、有志の方々や事務方と
相談した結果、観望会を9月上旬に開催することに決めました。大接近を少し
過ぎますが、火星が比較的早めに昇り、上弦の月も見える時期にあたるので、
子供連れに最適であろうとの判断からです。また、これまで悪天候のため何度
も観望会が流れた経験から、思い切って9月2日(月)、3日(火)、4日(水)
と連続3日間の開催を設定しました。3回行えば1回は晴れるだろうという期待
からです。
 わずか1週間程度前に開催を決めましたが、地元新聞紙に予定が載ると、か
なりの反応がありました。そこで、説明会場の収容人数を超える50名以上の参
加者があると推定し、まず玄関の外の野外特設会場で火星の話を行い、終了後、
見晴らしが良いVERA観測棟横で観望会を行うことにしました。千葉専門職員を
はじめとする水沢観測センター事務室の皆さんの会場セッティングなどの多大
なる協力のもと、松本、岩館、堀内、亀谷で主に対応しました。

   玄関前野外特設会場

         玄関前野外特設会場での火星の説明

 1日目は生憎雨で中止になりましたが、2日目は雲間から火星が見え、何とか
観望会を行えました。望遠鏡は、VERAの完成を機会に購入したミードの20cmシ
ュミットカセグレン望遠鏡1台とビクセン8cm屈折経緯台2台を使用しました。
市内から家族連れなど約100名が参加し、火星をみて喜んでくれました。ただ、
大気の状態が悪く、火星の像が大変揺らいでいて、『やはり火星は燃えるよう
に見えるのですね』と、なぜか納得している方もいらっしゃいました。残念な
ことに、段々雲が多くなり、終了予定の9時前には完全に見えなくなってしま
いました。列を作って望遠鏡を長い間待っていた多くの方々は、お預け状態に
なってしまいました。この時、自然相手の観望会の難しさを実感させられまし
た。

   玄関前野外特設会場

          VERA観測棟横での火星観望会

 幸い3日目は、久々の好天に恵まれました。この日は、早くから大勢の市民
が訪れてくれました。前日と同様に火星の説明を松本と亀谷で行ったあと、昨
日同様に観望会を行いました。この日は、上弦の月と星々も良く見えたため、
火星以外に月やアルビレオといった二重星にも望遠鏡を向けました。火星は初
めての人には見づらいのか、白い南極冠がわかるのが精一杯の方が多いようで
した。それでも、ようやく念願の火星を見ることができた喜びを表す方が多く
いらっしゃいました。月を初めて観た人も多く、月のクレーターに感動する方
が印象に残りました。この週に観望会を設定してよかったと感じた瞬間でした。
 結局、前日に火星を見ることができなかった方の再訪問も含めて、この日は
200名の参加者を数えました。2日間で人口6万人の水沢市住民の約200人に一人
が訪れた事になります。水沢観測センターで行った観望会でこれほどの参加者
があることはめずらしく、火星の関心の高さを表しているようです。今後も、
観望会を行うことが大切だと感じました。
  「国立天文台ニュ−ス No.125より転載」<水沢観測センター 亀谷 收>