水沢観測センターの新しいコンピュータシステムの紹介

 

 水沢観測センターのコンピュータシステムが昨年11月に更新され、IBMの
RS/6000 SPを中核としたシステムが12月1日に運用を開始しました(写真)。
平成10年度よりユーザ調査を行って新システムに対するイメージを練り、更新
手続き・作業を進めてきましたがようやく通常運用体制になりました。以下に
新システムの概要を紹介します。

    IBM System

新システムの構成
1.計算サーバ兼ファイルサーバ装置
  IBM RS/6000 SP POWER3 375MHz 7ノード(計26cpu)
  総メモリ容量 25GB
  1cpu処理速度 SPECfp95値 50.9
  総合演算能力 33Gflops
2.磁気ディスク装置
  容量 3TB(RAID5構成)
3.磁気テープ装置
  容量 8TB、ドライブ数 3
4.専用目的のWS   3台
5.システム管理用WS 3台
6.X端末、PC   53台
7.プリンタ装置   31台
8.基幹部分のネットワーク 1000BASE-SX
9.導入ソフトウェア
   C, Fortran90, ESSL, IMSL, TotalView, MATLAB, NOVA*GKS 等

 計算サーバであるSPは1CPU当たりの実効性能が前システムと比較して4倍以上、
ノード間のデータ転送速度も最大300MB/Sで、並列演算を行うためのシステム支
援環境が充実しており、並列演算処理を高速かつ効率的に行える操作性に優れ
たサーバであるといえます。また、IBMのライブラリであるESSLやBLAS、IMSL
といった科学技術計算ライブラリも利用できるので、これまでできなかった大
規模計算処理に大きく貢献するものと期待しています。
 磁気ディスク装置はこれまで蓄積してきたVLBI、GPS、超伝導重力計等の観
測・取得データの他、後述するプロジェクト・データ等を蓄積します。前シス
テムではテープライブラリ装置を2次記憶装置として運用してきましたが、I/O
速度の問題等で使い勝手が悪かったため、新システムではディスク容量を大幅
に増強し、テープライブラリ装置はバックアップ専用装置として運用します。
 現在、水沢ではVERAとRISEの二つのプロジェクトが進行しています。月探査
周回衛星計画(SELENE)の中で機軸となる機器を搭載するRISEでは、全体のデー
タ処理、解析処理を水沢地区において行う予定であり、そのための開発環境と
して、これまでの資産の継承とデータの移行を考慮したHP ワークステーション
(主記憶2GB,磁気ディスク容量144GB)を1台用意しました。また、VLBI観測デー
タ等の画像処理用としてSUNワークステーション (主記憶1GB,磁気ディスク容
量144GB)を用意しています。これにはAIPS等をインストールして利用する予定
です。VERAのデータ処理、解析用システムはこれらとは別に導入準備が進めら
れています。
 端末としてはこれまで研究者に一人1台のワークステーションを配備してき
ましたが、新システムではサーバ系マシンを充実させ、端末系の管理を軽減す
るという方針のもとにX端末を配備しました。事務系にも従来通り一人1台のパ
ソコンを配備しました。更にこれらすべてのマシンから共通環境のもとで、地
区全体のスケジュール管理や文書管理を行うことができるグループウエアも導
入しました。これを活用することによって水沢地区の情報流通をより早くして
業務能率の向上を図りたいと考えています。
 ネットワークはこれまで計算機室のみ100Mbpsでしたが、計算機室と各フロ
ア間を1Gbpsとし、更に各研究室へは100Mbpsとして高速化を図りました。ネッ
トワークで残る問題は水沢−三鷹間の回線増強です。これは今回のシステムと
は別の範疇で実現していただかなければならないことですが、今年末からは
VERAの試験観測、来年にはRISEのデータ処理試験が開始しますので、天文台の
インフラとして是非とも今年中に回線の増強を行う必要があると考えています。
 以上、ハードウェアを中心に新システムの概要を紹介しましたが、ユーザが
新システムの機能と性能を存分に活用して成果を産出できるように、運用・管
理体制も整備していきたいと考えています。また、新年度からは共同利用でき
るようにする予定です。皆さんの積極的な利用をお待ちしています。

「国立天文台ニュ−ス No.92より転載」  <水沢観測センター 石川利昭>