第14回地球潮汐シンポジウム(ETS2000)報告

 

 本天文台ニュース6月1日号(No.85)でも紹介した標記シンポジウムが、8月28日
(月)から9月1日(金)の5日間、IAG(国際測地学協会)第5委員会(地球潮汐委員会)、
測地学研究連絡委員会、測地学会、国立天文台の主催で、水沢市文化会館(Zホール)
において開催された。本シンポジウムは、その第1回が1957年ベルギーで開かれ、
以来ほぼ4年毎に開かれてきた。アジアでは1993年に中国で開催されたが、日本での
開催は今回が初めてである。シンポジウムに先立ち、県民、市民を対象とした公開
講演会「宇宙の力が地球を動かす」を開催した。これには約140名の参加者があった。
シンポジウムの参加者は海外58人、国内76人の計134人と、当初予定していた方々の
ほぼ全員の参加を得、シンポジウムを盛会の内に終えることができできた。シンポ
ジウムの準備、運営は主として水沢地区のメンバーで行ったが、お世話した側とし
て会が無事に終わりほっとしている。

    挨拶に立つ Groten ドイツ・ダルムシュタット工科大学教授

写真1:挨拶に立つ Groten ドイツ・ダルムシュタット工科大学教授(IAG会長代理)

 シンポジウムは、開会式での観山企画調整主幹(国立天文台長代理)による歓迎の
挨拶で始まった。開会式に引き続き9つの分科会に分かれた研究発表、討議が行われ
た。各分科会は招待講演と一般講演(口頭発表、ポスター講演)で構成されている。
新世紀へ向けて、また日本の国立天文台が主催者の一端を担うことを考慮し、今回
のシンポジウムでは、従来の分科会に加え‘テクトニック活動と地球潮汐’、‘惑
星潮汐’について議論する2つの分科会を独立に設けた。前者では海底火山活動と
地球潮汐の影響、弾性波速度の潮汐モジュレーション、また後者では月震の震源過
程、地球−月系の潮汐史、VLBIによる月の揺動の観測計画等、今後の研究の発展が
期待される研究発表があり、主催者側の意図の一端は達成されたと考えている。

    ポスター会場での発表風景

          写真2:ポスター会場での発表風景

シンポジウム概略
1.参加総数 134人(内訳:国内76人、国外58人(学生参加者10人、同伴者10人を含
  む))
2.論文数 134編(内訳:招待講演9編、口頭発表70編、ポスター発表55編)
3.分科会
 ・潮汐観測機器開発、観測法
 ・陸上での潮汐観測
 ・宇宙技術による潮汐観測
 ・超伝導重力計による観測
 ・データ処理と解析法
 ・潮汐理論
 ・大気・海洋の荷重と海洋潮汐モデリング
 ・テクトニック活動と潮汐
 ・惑星潮汐
4.シンポジウムでの決議
 閉会式において、11の決議文が採択された。この中で国立天文台での研究にも直
 接関係した、
 ・GGPプロジェクト(超伝導重力計による国際観測プロジェクト)の更なる6年間の
  継続、国際協力によるネットワークの検定の早期実現、
 ・月・惑星潮汐研究の重要性に鑑み、この種の分科会を今後本シンポジウムに含
  めること、
 が決議された。

「国立天文台ニュ−ス No.89より転載」<実行委員会委員長/地球回転研究系 佐藤忠弘>