「イーハトーブ宇宙実践センター公開展示会
          ・公開ミニシンポジウム」報告

 

 「宇宙と私たち」をテーマとした展示会が平成17年1月19日から23日まで水
沢市横町のメイプル4階産業文化ホールで、また、これに連動したミニシンポ
ジウムが1月22日に水沢観測所で開催されました。これらはイーハトーブ宇宙
実践センター(略称ISAC、http://www16.ocn.ne.jp/~isac/)の主催、水沢観
測所の共催によって行われたもので、「開かれた天文台」を目指した両者の共
同イベントとしては天文台ニュース136号でご報告したサイエンスメイトに続
く第2弾となります。「宇宙と私たち」というのはいささか漠然としたテーマ
と思われるかも知れませんが、生命・農業・言葉など身近なものを通して宇宙
と人間の関わりを考えてみたいという思いがその根底にあります。「天文台っ
てなんだか難しそう」というイメージを払拭する狙いもありました。

    オープニングイベント

      オープニングイベント。5歳児の演奏とは思えない迫力。

    いつかは火星に住めるかなぁ

           いつかは火星に住めるかなぁ。

 展示会ではオープニングイベントとして第二東水沢保育園の5歳児のみなさ
んに太鼓演奏をお願いし、開幕を盛り上げていただきました。すばる望遠鏡が
とらえた宇宙、ISAC会員らが撮影した天体写真、初めて天体望遠鏡で月を見た
幼稚園児・保育園児の描いた月の絵や月観望会当日のようすをおさめた写真、
銀河をモチーフにした絵画、水沢観測所で開発に取り組んでいる月探査衛星搭
載用観測機器の紹介、広報普及室からお借りしたマーズ・ハビテーション模型
などを展示しました。惑星やVERA電波望遠鏡のペーパークラフトコーナーや宇
宙食販売コーナーも設け、家族連れでも楽しめるように配慮しました。会場の
ある建物にスーパーマーケットが入っていることもあって買い物ついでに立ち
寄ってくださった方も多かったようです。「あっパパ、お星様の写真だよ!」
と言いながら会場に駆け込んで来る子供さんの姿が微笑ましかったです。来場
者数は5日間で900人を超え、たいへん盛況でありました。

    オープニングイベント

     中高生、主婦を交えたパネルディスカッションのようす。

 毎年一般公開では最先端の天文学・地球物理学の成果を分かりやすく解説す
る講演会を行っていますが、今回のミニシンポジウムでは少し視点を変え、宇
宙・地球環境と身近な生活を結びつけるというテーマ設定で5人の有識者の方
に「宇宙・生命・人の営み」、「母なる星、太陽を探る」、「環境の変化と痛
み」、「農と自然」、「天文と地域の言葉」というタイトルでそれぞれの専門
分野の視点からご講演いただきました。少し難しいテーマでありましたが、み
なさん多大な努力をしていただき、どの講演も大変興味深い内容でした。
 休憩時間にはギター演奏でリラックスするという演出を加え、最後は中高生
・主婦を交えたパネルディスカッションを行い、「身近に感じる宇宙」という
テーマでそれぞれの体験を話していただきました。パネリストだけでなく会場
の参加者からも意見や感想が活発に出され、特に理科教育に関して「教室で教
科書から学ぶだけでなく、外に出て実際の自然や宇宙に触れることが科学への
関心を高める」という趣旨の意見が多く出ました。今後の広報普及活動の展開
を考える上でも大いに参考にすべき意見だと思いました。
     「国立天文台ニュ−ス No.141より転載」<水沢観測所 松本晃治>