秋篠宮両殿下、水沢観測センターをご訪問

 

   秋篠宮両殿下

 7月24日に秋篠宮親王殿下、同妃殿下が水沢観測センターを訪問され、VERA
水沢局、木村記念館等をご視察された。水沢市の隣の胆沢町にある水沢農業高
校で開催された全国高等学校馬術競技大会開会式へのご出席に併せて視察され
る施設の一つに選ばれたのである。当日のご説明には私と日置水沢観測センタ
ー長があたり、宮内庁職員及び岩手県副知事が随行した。あいにく当日はかな
りの雨であったが、約50分にわたり熱心にご視察いただいた。
 木村記念館では、緯度観測所初代所長である木村栄が発見した緯度変化のZ項
について必ず説明しなくてはならないのであるが、これは通常の見学でもなか
なか理解されず、特に時間が厳しい今回は頭が痛いことであった。ところが案
ずるより産むが易し。作り直したパネルを用いてご説明したところ、若干の時
間超過はあった(説明が下手なだけか)ものの、ご質問の様子から極運動による
緯度変化との違いについては、かなりご理解いただけたものと思われた。
 記念館に展示されている第1回帝国学士院恩賜賞、第1回文化勲章、英国王立
天文学会金賞の賞牌は実は精巧にできた模造品(本物は水沢市に貸出)なのであ
るが、「これ本物ですか」と質問され思わず「偽物です」と答えたのは失敗で
あった。さすがにそれだけではまずいと思い、貸し出し中であることは付け加
えたが。
 そのほか、木村記念館では主に昔の観測機器を見ていただいたが、時計、天
頂儀、地震計などのについて思いの外多くのご質問をいただき、興味をもって
いただけたものと思う。また、SELENE及びその後の月面望遠鏡計画についても
関心を示された。
 木村記念館の後はVERA水沢局をご視察いただいた。VERAのことはすでにご存
じであったが、雨の中、アンテナ前でやや詳しくご説明申し上げた。ここは報
道写真を撮影する場所として指定されており、カメラマンが群がっていた。撮
影のためにカメラ方向を向いている時間をとるようにと事前に指示されていた
ので、写真のようにアンテナを背にせざるをえず、アンテナそのものの説明は
満足できるものではなかったように思う。
 観測棟ではメーザー源(W3OH)を受信し、アンテナが向くに従って自己相関ス
ペクトルが現れる様子を見ていただいた。電波望遠鏡では画像が直接見えるわ
けではないので、動作しているか目に見える形で出すのが難しいのであるが、
とにかくうまくいって一安心であった。そのほか、ディジタルフィルターや記
録機等を見ていただいた。これまでご質問はもっぱら殿下からであったが、こ
こでは妃殿下からもご質問があり、関心をもたれたご様子であった。
 お成りになる前にはリハーサルがあり、県の担当職員からはゆっくり歩くよ
うに注意されていたが、実際には殿下も妃殿下もコンパスが長く、短足の私は
むしろ追いかけるほうに回ってしまい、慌てる場面もあった。
 今回のご視察については、昨年秋に岩手県から打診があり、準備を重ねた。
特に、傷みの激しい構内道路等や5月の宮城県沖地震で損傷した木村記念館の
補修には本省及び管理部から格別のご配慮をいただき、また、水沢地区職員に
は岩手県や警察との度重なる打ち合わせ、木村記念館整備、修理中のVERAアン
テナの駆動をはじめとする周到な準備していただいたことに深く感謝したい。

「国立天文台ニュ−ス No.124より転載」
                   <地球回転研究系主幹 真鍋盛二>