VERA石垣島観測局完成

 

 シーサーが見守るVERA石垣局20mアンテナ

 VERA計画が打ち出されたのは、昭和60年暮れ釜房での経緯度研究会の席上で
あった。それから苦節16年余、VERA最後のサイト石垣島観測局が完成し、去る
5月25、26日開局記念式典、及び記念行事が好天のもと盛大に開催された。
 石垣島は水沢より2300Km、人口4万5千人の珊瑚礁に囲まれた風光明媚な島で
ある。 観測局は、島のほぼ中央部やや西よりの地点で、最高峰・於茂登岳(お
もとたけ525m)の南裾野に位置する名蔵(なぐら)ダムの近くにあり、空港・
市街地から10Km余の市有地である。北側には名蔵ダムの堤防を築いた岩石を切
り取った跡が見られる。また、ダムの土捨て場でもあったため、基礎工事は土
間周辺12個所と中央部4個所に直径1.5mの穴を、深い場所で29mも掘削し、鉄
筋コンクリートを流し込むものであった。
 アンテナ建設工事は、昨年5月18日の起工式に始まり、6月半ばより猛暑と戦
いながらの基礎工事、9月より台風に見舞われながらの本体据え付け工事が行
われ、12月末に鏡面パネルが設置された。それと並行して、8月はじめより観
測棟の建設も行われ、今年1月末に竣工した。
 開局記念行事の先頭をきって、5月18日より26日まで県立石垣少年自然の家
において宇宙写真展が開催され、スバル望遠鏡の天体画像と地元八重山星の会
会員の力作が展示された。
 5月25日記念式典に先立って10時より登野城(とのしろ)小学校体育館にお
いて宇宙講演会が開催された。市内の諸行事と重なり、果たしてどのくらいの
聴衆があるのか心配されたが、星の会のみなさんの働きかけで300席の椅子席
が満席に近い280名の聴衆で埋まった。本間さんの「天の川のふしぎ」で聴衆
を星の世界の魅力にひきこみ、日置さんの「ゆっくり地震と津波」は地球内部
の謎をわかりやすく解説し、最後に海部台長の「おもろと宇宙」で締めくくっ
ていただいた。
 午後1時30分より、アンテナサイトにおいて現地開局式を実施、海部台長、
村上石垣市教育長のテープカットと挨拶のあと、アンテナの動作披露、観測棟
の案内が行われた。そのあと市内ホテルに移動して開局記念式典を行った。海
部台長の挨拶、大浜石垣市長はじめ、市議会議長、八重山支庁長のみなさんよ
り祝辞をいただき、小林VERA統括責任者が「VERA計画の科学目標と建設状況」
について説明した。その後アンテナおよび観測棟建設に貢献された地元の業者
に感謝状が授与され、一足早くアンテナが完成した水沢・入来・小笠原の各市
町村長より寄せられた祝電が披露された。式典後懇談会が開催され、地元関係
者、工事関係者、森本名誉教授等よりお祝いのテーブルスピーチをいただいた。

 テープカット

  開局式でテープカットを行う海部台長(右)と村上石垣市教育長

 翌26日も好天に恵まれ、10時より16時まで施設公開が行われ1500名程の訪問
があり、用意したパンフレットは不足する盛況であった。アンテナの動作披露、
2階ベランダでの見学、観測棟では各装置の紹介やパネルの展示が行なわれた
が、アンテナ本体2階ベランダでの見学では、一度昇ってみたいという見学者
で長蛇の列が出来るほどであった。30度を越える屋外では飲み物コーナーの消
費は予想を越え、途中追加購入をしたのだったが、それも焼け石に水の状態で
あった。
 夕方、会場を石垣少年自然の家に移し、星空講演会と観望会が行われた。自
然の家では屋上にニュートン式30cm反射望遠鏡が設置されており、季節ごとに
観望会を開催しているそうである。100名位と見込んだ参加者が続々と詰め掛
け(250名)、講演会場は急遽机を撤去して、椅子を持ち込んだりしたが、立
ち見席、会場の外より聞く方々も多数あり、その中で18時30分よりロマンティ
ックな官谷さんの講演が行われた。講演後亀谷さんの音頭のもと屋上で観望会
が行われた。自然の家据え付けの望遠鏡の他、国立天文台で購入した望遠鏡や
双眼鏡、星の会会員の方々の望遠鏡を屋上に設置し、月・金星・木星・南十字
星等を観望した。特に南十字星は丁度南中付近にあり、上3つの星が双眼鏡の
視野ではっきり確認することができた。

 星空観望会

星空観望会で八重山星の会通事会長(中央)の星座説明を聞く石垣の皆さん

 この記念式典・行事は、笹尾・宮地両氏が中心になり、企画、各関係機関と
の打合せ、綿密な行動計画の作成等準備万端精力的に進めていただいた。また、
円滑に運営できた影には三鷹・水沢の事務の方々の努力に覆うところが多い。
 見学者等の動員については地元八重山星の会の皆さんの奔走のおかげである。
何度も記念行事のために会合を開いていただき、宇宙写真展の展示、ホスター
の配布、マスコミへの働きかけ等、公務にも多忙のなか全面的にご協力をいた
だいた。
 予想を上回る記念行事の人出に天文台スタッフも嬉しい悲鳴で、目の回る忙
しさであった。自然に恵まれた石垣では自然に対する関心も深く、国立天文台
に寄せる期待も大きいものを感じた。

「国立天文台ニュ−ス No.109より転載」
               <水沢観測センター・助手 岩舘 健三郎>
                    (VERA石垣島観測局建設担当者)