VLBIユーラシアンネットワーク

 

中国ウルムチ天文台へのK-4システム配備

 中国科学院ウルムチ天文台にK-4型VLBI観測システム(K-4システム)が配備さ
れました。ウルムチ天文台の地理的位置は国際VLBI観測網を結合する上で極めて
重要な意味を持っており、K-4 システムが配備される事により地球力学研究のた
めの新しい国際VLBI観測網が構築されます。また、VSOP(スペースVLBI)をにら
んだ天体物理学のためのVLBI観測をも想定しています。
 ウルムチ天文台向けのK-4システムはK-4ハーフセットと呼ばれ、予算節約のた
めに中間周波数からビデオ信号へ変換するK-4ビデオ変換器が含まれていません。
従って、信号はMark-III型VLBI観測システム(MARK-IIIシステム)のビデオ変換
器モニター端子から流用する構成となっていて、観測時にはK-4システムとMARK-
IIIシステムの一部の観測機器を同時に運用する事になります。
 水沢観測センターからは、観測機器以外にも電源電圧変換器やテーブルタップ、
各種同軸ケーブルまで輸出しました。輸出に当たっては、輸出先がココム規制対
象国のために輸出貿易管理令の製品判定という書類を準備する必要があり、ディ
ジタルレコーダーは言うに及ばず、テーブルタップやケーブル類に至るまで書類
を準備する事になりました。しかも、学術研究に使用する物ということで非課税
申請も行うなど、会計課の方々には膨大な量の作業をこなして頂きました。


        Urumqi K4

 ウルムチ天文台でのK-4システム設置及び第一回目の観測は、水沢観測センタ
ーの浅利一善さんと私が担当する事になりました。第一回目の観測結果を出来る
だけ早く知りたいと言うことで、観測テープ1本をあらかじめ水沢からウルムチ
へ持ち込み、観測記録後にそのテープを再度水沢へ持ち帰って即刻相関処理を行
うことになりました。中国入国時に通関で課税されないように、前もってウルム
チ天文台長からの中国語と英語による観測テープの説明書を準備しての出発でし
た。
 ウルムチ天文台の25m電波望遠鏡は南山観測所にあり、ウルムチ市街地から南
へ約100kmの南山という山頂に位置し、付近にはシルクロードの天山山脈が威容
を構えています。舗装路は途中までで、デコボコの山道を走り抜いた標高約2100m
の観測所に空との鮮やかな対比を見せる白いアンテナを見たときには、本当に遠
くまで来たものだと思わずにはいられません。ウルムチ天文台のVLBIスタッフ総
勢13名は、観測の度にウルムチ市街地にある天文台本部と南山の間を往復してい
ます。10月、11月は観測が多くて、月に4〜5回は南山観測所へ移動していました。
 水沢から輸出したK-4システム一式は、南山観測所で通関検査を受けました。
さっそく設置作業を行った所、コンピューターディスプレイの赤い色が表示され
ません。浅利さんが得意の腕をふるい、無事正常に表示されるようになりました。
 観測スケジュールファイルは、Mark-IIIシステム制御コンピューターと25mア
ンテナ制御コンピューターで使用できるようにそれぞれ若干の修正をしました。
位相較正装置の信号が不安定で、観測開始直前まで調整しました。10月7日、12時
(JST)いよいよ観測開始です。ウルムチ天文台スタッフと協力しながら観測テープ
交換を行い、K-4システムのトラブルはなく観測は終了しました。
 観測テープは1巻だけ予定通り持ち帰り、簡易型相関器担当の酒井俐さんたち
が即刻相関処理を行いました。全チャンネルに電波星の信号(フリンジ)が検出
され、位相較正信号に位相変動が見られるものの、K-4ハーフセット方式評価の
ための第一回目のVLBI観測は成功しました。今後の定常的な観測が期待されます。
                              <佐藤克久>