国内VLBIネットワーク

 

国内VLBIネットワーク

 水沢10mアンテナの共同利用は、主にVLBIの1局としての利用形態がほとんど
である。特に、1994年度から国内VLBIネットワーク共同利用運用が開始し、新た
な段階を迎えた。
 この国内VLBIネットワークとは、国立天文台の所有する3つのアンテナ(野辺
山宇宙電波観測所45mアンテナ、水沢10mアンテナ、鹿児島市に移設された6mアン
テナ)が骨格となり、VLBIネットワークを組む。これに、国立天文台との共同研
究の枠内で参加する通信総合研究所関東支所鹿島宇宙通信センター34mアンテナ
が通常加わる。それ以外のアンテナでも、スケジュールが合えば、参加可能である。
 この共同利用は、野辺山宇宙電波観測所の45mアンテナ共同利用の枠内での運用
形態ととるので、年間2回、6月と10月に45mアンテナの単一鏡としての観測提案
書募集と同時に募集する。そして、45mアンテナの単一鏡として使用したい他の一
般の観測提案と同じ土俵で議論され、採否が決定される。昨年度は、7件が採択
された。審査段階での45mアンテナの単一鏡の観測提案との違いは、次の点であ
る。まず、審査の前に、国内VLBIネットVLBI運用責任グループ(VEG:VLBI Expert
Group)で観測提案書に対してVLBI観測自体が可能かどうかについて技術的な審査
を行う。そして、VLBI観測自体が可能であると判定されたものについてのみ、通
常の観測提案書とともにレフリーに送られることになる。
 観測提案書採否結果は、各観測提案者に連絡されると同時に、国内VLBIネット
ワーク運用責任者グループ(VEG)に連絡され、観測準備に入る事になる。
国内VLBIネットワークの実質的運用は、国内VLBIネットワーク運用責任グルー
プ(責任者:亀谷)が行う。このグループは、国立天文台の職員がなり、主に水
沢地区の者が担当し、野辺山宇宙電波観測所の宮地氏が加わっている。このグル
ープは、観測スケジュール・磁気テープの調整と各局への送付、国立天文台以外
の参加機関との調整、観測時の人員・機器の把握と調整、観測時の状況変化への
対応、観測後の記録テープの回収と相関処理の把握、などを行っている。結構、
仕事量がある。
 一方、国内VLBIネットワーク運用責任者グループ(VEG)を監視・サポートする
ものとして、国内VLBIネットワーク観測局代表者会議(議長:面高俊宏鹿児島大
教授)がある。これは、現状で実質的に参加可能な局である野辺山・水沢・鹿児
島・鹿島・臼田の各局の代表者と、相関処理局である水沢NAOCO相関局・三鷹FX
相関局の代表者、解析ソフト充実の代表者の計7名から構成される。ほぼ、月1
回会議を行い、国内VLBIネットワークで行うプロジェクト観測・試験観測の内容
の議論と決定、運用上の諸問題の確認と対策、野辺山45mアンテナを含まない観測
局を使用する22GHz観測の提案の議論、等を行っている。
 相関処理は、主に国立天文台が開発した相関器であるNAOCO(New Advanced One
unit COrrelator)で行う。2局1基線用1台が水沢観測センターにあり、ここ2
年半ほど、ほぼ毎日毎晩運用されている。水沢笹尾氏が責任者で、酒井氏が運用し
ている。水沢のスタッフが当番で処理に当たっている。日本国内で、これまでこ
れ程酷使された相関器は無い。2局1基線の処理能力しか無い為、通常の4局の
観測体制では、観測時間の約10倍の処理時間がかかるのが、大きな問題で、この
制限が 国内VLBIネットワークの観測時間の制限を実質的にあたえていた。
最近、三鷹のFX相関器が動き出した。この能力は抜群で、うまく運用できれば、
水沢の相関局と組み合わせて、上記の観測時間の制約がなくなるであろう。
 問題は、解析ソフトの充実と、処理体制の充実である。現在、フリンジレート
マッピングソフトのみが、共同利用可能になっているが、残念ながら能力に限界
がある。位相を使用した解析ができるAIPS等での解析ができるように現在関係者
が努力しつつある。一日でも早く、これらを使った解析がどんどんすすめられる
ような状況にしていきたいと考えている。
 最後に、この場を借りて、国内VLBIネットワークに積極的に参加していただい
ている通信総合研究所関東支所鹿島宇宙通信センターの方々を始め、国内VLBIネ
ットワーク運用に積極的に関わっておられる皆様に深く感謝いたします。
                              <亀谷 收>