1999年1月1日閏秒(うるう秒)挿入の紹介

 

 1999年1月1日、午前9時(日本時間)丁度に閏秒(うるう秒)が挿入されました。
これは、日本時間の午前8時59分59秒のあとに1秒挿入し(つまり59秒、60秒)、その
後に午前9時00分00秒とするものです。

         1999年 1月 1日 午前8時59分59秒(JST)
         1999年 1月 1日 午前8時59分60秒(JST)
         1999年 1月 1日 午前9時00分00秒(JST)


閏秒はなぜ必要なのでしょうか?

 現在使用されている時系には、下記のように3つの種類があります。

・地球の自転に基づく時系:平均太陽時 (UT2)
・地球の公転(地球重心が太陽系重心の周りをまわる)に基づく時系:力学時 (TD)
・原子の放射に基づく時系:原子時 (TAI)

 最初の二つは天文観測により求められます。地球自転による時系である平均太陽時
は日常生活と密着していますが、地球の自転はさまざまな力学的な影響を受け変動す
るので時間の基準としては精度が不十分です。力学時は地球の公転から求めるので精
度は平均太陽時よりは良いのですが太陽系重心の周りを廻るのに1年を要し、実際の
時系を求めるデータ集積に10年〜20年かかります。
 原子時は原子の放射周波数を基準にして決められるもので、精度が高くきわめて短
い周期の積算で求めることができます。セシウム原子による秒が、1967年の国際度量
衡総会で正式に定義されました。1971年の国際度量衡総会では、国際原子時(TAI)を
定義し、原点を1958年1月1日0時0分0秒の平均太陽時と定めました。国際原子時は定
義された秒をもっとも正確に積算する時系です。現在は世界の各機関の国際時刻比較
によって約160台の原子時計データを国際度量衡局(BIPM)に集めて決定されています。
 しかし、日常生活に用いる時刻は昼と夜の区別など天文時に依存する必要がありま
す。国際原子時は平均太陽時と1958年の原点では一致していますが、両方の時系の正
確さと秒間隔の違いから少しずつ刻々とずれていくことになります。そこで、日常生
活に合うような原子時系、協定世界時(UTC)を作り平均太陽時と0.9秒以内に一致する
ようにしました。協定世界時は各国の標準時として使用され、日常生活とは合ってい
ますが、国際原子時とは刻々とずれていくことになります。



 協定世界時(原子時の一つ、各国の標準時として使用される時系)と国際原子時の
ずれは、1月1日または7月1日の0時0分0秒UTC(日本時間午前9時)に必要となったと
きに閏秒を挿入して合わせられます。

 つまり、日常生活の時系は少しづつ遅れていることになります。これは地球の自転
が少しずつ遅くなっていることに起因します。月の引力などによる潮汐により海洋底
が摩擦を受け、地球の自転にブレーキがかかるのが主な原因と考えられています。

参考文献
世界時、力学時、国際原子時、協定世界時:国立天文台編理科年表平成11年版、丸善
株式会社、pp168-172.
                               <天文保時室>

                           
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